【災害時の住宅】仮設に「移動式」活用 プレハブ型より簡単、全国で広がり

 熊本県球磨村に運搬された「ムービングハウス」の仮設住宅=2020年7月
 熊本県球磨村に運搬された「ムービングハウス」の仮設住宅=2020年7月
ムービングハウスやトレーラーハウスなどの移動式住宅を、災害時の応急仮設として活用する動きが広がっている。2018年の西日本豪雨以降、全国で200戸超が供給された。防音性や断熱性に優れ、一から建設するプレハブ型より早くて簡単に設置可能。一部の.....
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 ムービングハウスやトレーラーハウスなどの移動式住宅を、災害時の応急仮設として活用する動きが広がっている。2018年の西日本豪雨以降、全国で200戸超が供給された。防音性や断熱性に優れ、一から建設するプレハブ型より早くて簡単に設置可能。一部の自治体では有事に備え、移動式を事前に確保する取り組みも始まった。[br][br] ▽快 適[br] 木の素材感を生かした、赤や黄色、緑の明るい家が並んだ。18年の西日本豪雨の際、岡山県倉敷市が全国で初めて導入した移動式の応急仮設住宅。「生活音に悩まされない」「気密性が高く冷暖房が効きやすい」と被災者に喜ばれた。[br][br] 北海道や長野県の企業の協力で51戸を供給。完成済みの住宅を運び、ライフラインをつなぐだけなので、プレハブ型より2週間早く入居が始まった。1戸当たりの建設費用も約300万円安い約540万円だった。[br][br] 当初はボランティア向けの宿泊場所などに導入したが、好評なため仮設に採用したといい、市の担当者は「災害時の新たな選択肢」と振り返る。[br][br] 解体も不要で、一部は20年の7月豪雨で被災した熊本県球磨村へ移し、仮設住宅に再利用された。移動式は18年の北海道地震や19年の台風19号の被災地でも導入された。[br][br] ▽供給力[br] 共同通信が昨年12月~今年1月に行った47都道府県アンケートによると、福井、愛知、高知の3県が災害時に移動式住宅の供給を受ける協定を業界団体と締結していた。青森、岩手、兵庫など10県は「検討中」とし、工期の短縮や建設費用の削減を評価する回答が多かった。「結んでいない」とした自治体でも「締結に向けて情報収集中」(新潟県)といった前向きな意見が目立った。[br][br] 一方、岩手県の担当者は「供給する団体の概要が不明で、建設から撤去まで確実にできるか不安」と情報不足や有事の対応力を懸念した。[br][br] ▽備 蓄[br] 移動式住宅をホテルや地域の交流拠点として「備蓄」する動きもある。茨城県境町は3月末、大手住宅メーカーなどと地域振興や防災の連携協定を結んだ。同町は、移動式住宅を学童保育やホッケー場のクラブハウスとして活用し、災害時は被災地へ運んで仮設住宅に転用。町外の災害でも支援に生かす方針だ。[br][br] 移動式住宅の普及に取り組む立教大の長坂俊成教授(防災危機管理)は「移動式仮設は経済的で、一般住宅と変わらない品質だ。すぐ入居できるので被災者の負担が軽減され、災害関連死の抑止につながる」と利点を強調。「南海トラフ巨大地震が起きれば仮設住宅の供給が追い付かない。官民が連携し、普及を後押しすべきだ」と話した。 熊本県球磨村に運搬された「ムービングハウス」の仮設住宅=2020年7月