【愛知県知事リコール署名偽造】民意の捏造、群馬で16年前にも

 リコール反対派のチラシ
 リコール反対派のチラシ
愛知県知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件は、運動事務局による組織的不正の疑いが浮上する異例の展開に注目が集まるが、約16年前にも同様の事件が群馬県で起きていた。罰金刑を受けた元町議らは運動が「感情先行型」となった点を反省。繰り.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 愛知県知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件は、運動事務局による組織的不正の疑いが浮上する異例の展開に注目が集まるが、約16年前にも同様の事件が群馬県で起きていた。罰金刑を受けた元町議らは運動が「感情先行型」となった点を反省。繰り返される「民意の捏造(ねつぞう)」に、関係者は「権利を行使しようとする以上、ルールは厳守しなければならない」と強く警告する。[br][br] 「一歩間違えればリコールが成立していた。とんでもないことだ」。群馬県みどり市の上岡克己市議(78)が怒りを抑えながら静かに語る。[br][br] 2005年、合併前の旧大間々町では町を二分するリコール運動が展開されていた。当時の町長(故人)が住民投票で決まった市町村合併案に消極姿勢を示したことから、一部の町議がリコール運動を開始。成立に必要な署名数(5902人)を上回る6102人分の署名を集めたが、選挙管理委員会が270人分を無効と判断。僅差で一転、不成立となった。[br][br] 上岡さんは当時、大間々町議。「勝手に名前を使われた」という住民からの相談をきっかけに、町長と共に署名簿の点検作業を始めた。すると、同じ氏名や似た筆跡の署名が複数見つかり、偽造疑惑が浮上。関与した可能性のある関係者に抗議したがらちが明かず、町長が県警に刑事告発した。その後、地方自治法違反罪で2人が罰金刑を受ける事態に発展した。[br][br] 約20人分の偽造に関与したとして50万円の罰金刑を受けた田部井多市元町議(79)は「悪意はなかったが、リコール手続きに対する考えが甘かった」と振り返る。[br][br] 支援者の自宅を訪ねて留守だった場合に電話で賛成の意思を確認して自ら署名したり、書式がふぞろいの署名を「見た目がみっともない」という理由で別紙に清書したりしたと告白する。[br][br] 本来、選管に届け出た請求代表者か、請求代表者から委任された受任者しか署名を集められないが、関係のない住民が集めた例もあった。住民団体の会長として運動を支えた藤沢敏孝さん(74)は「時間的制約がある中でルールを周知徹底できなかった」と反省する。[br][br] 愛知県も大間々町も、結果的にリコールは成立せず、後味の悪い結果を残した。藤沢さんは「町長への怒りや町への思いが先にあって、ルール順守が後回しになった」と吐露。愛知県のケースでも歴史観の相違に基づく知事への怒りが運動の原動力となった。[br][br] 上岡さんは「政治に意見の対立があるのは当然。異議があれば堂々と主張すればいいだけのことだ」と強調。その上でこうくぎを刺した。「自分の欲望を何が何でも成立させようという態度は、真の民意とは呼べない」 リコール反対派のチラシ