日米首脳会談では科学技術や経済など幅広い分野の連携を確認し、中国が影響力を増す中でも日米両国が世界の主導的役割を果たす意欲を見せた。特に、バイデン米政権が重視する脱炭素などの気候変動対策は他の諸課題と別建てで文書を作成し、取り組みの加速を強調。新型コロナウイルスワクチンの製造や配送でも協働する。[br][br] ▽排出削減[br] 「日米で世界の脱炭素をリードしていくことを確認した」。菅義偉首相はバイデン大統領との共同記者会見で胸を張った。両首脳は「日米気候パートナーシップ」を設立し、内容を文書に取りまとめた。2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ目標や、それに整合的な30年の排出削減目標の達成へ協力を強化することで一致した。[br][br] 地球温暖化の枠組み「パリ協定」の実施について対話し、再生可能エネルギーや蓄電池などの分野で協力を強化。インド太平洋地域の脱炭素化の支援も行う。[br][br] 電力の流れを最適化する次世代送電網など環境に配慮したインフラ整備も進める。官民の資金について、温室効果ガスを大量に排出する事業への投資と距離を置くよう促すことも示した。[br][br] ただ日米両国の30年目標の削減幅や、日本が計画している石炭火力発電所の輸出案件の支援停止といった踏み込んだ方針は示されず、やや具体策に欠ける内容となった。[br][br] ▽技術覇権[br] デジタル化や科学技術は経済成長の鍵を握る。中でも、ミサイルやスマートフォンなど幅広く使われる半導体の確保は、米中の技術覇権対立により経済安全保障に直結する課題だ。世界的な品不足にも陥っており、半導体などのサプライチェーン(部品の調達・供給網)構築の協力を打ち出した。[br][br] 高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムは「信頼に足る事業者」が担うことが重要との見解で一致。情報流出による安全保障の懸念が背景にあり、バイデン氏は共同会見で「安全で信頼できる5Gネットワークを進める」と強調した。次世代規格「6G」を含む研究開発や普及に日米で計45億ドル(約4900億円)を投じる。[br][br] 人工知能(AI)や量子技術、宇宙といった分野でも協力して技術開発に取り組む。両国の優位性を維持し、中国などの追随をかわす考えだ。[br][br] ▽ワクチン普及[br] 日米両首脳は新型コロナワクチン供給での貢献も表明した。バイデン氏は会見で「最優先課題は世界的大流行を収束させ、インド太平洋地域の国々が立ち直るのを支援することだ」と強調した。[br][br] ワクチンを共同出資・購入し、途上国にも行き渡らせることを目指す国際枠組み「COVAX(コバックス)」への支援を強化し、インドでの製造能力拡大などを通じてインド太平洋地域でのワクチン普及を促進する。[br][br] 米国は新型コロナの感染者、死者数とも世界最多で、自国のワクチン確保を優先してきた。その間に中国やロシアが積極的に展開した「ワクチン外交」などの動きを意識し、日米が連携して対抗する構えだ。[br][br] 世界保健機関(WHO)については不当な影響を受けないよう改革を目指す。日米などは新型コロナの起源を巡るWHO調査に中国が非協力的だったと懸念を表明しており、独立した監視体制づくりなどで協力を図る。次の大流行も視野に、長期的な世界の「健康安全保障」構築も進める。