天鐘(4月15日)

一般的に一文字の「卵」はふ化する生き物のたまご、二文字の「玉子」は食用のたまごを指す。ただし、食材としての鶏卵は生が卵、加熱したのが玉子。卵かけご飯、玉子丼といった具合。同じたまごでも意味合いが異なる▼焼き肉とバーベキュー、ピーマンとパプリ.....
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 一般的に一文字の「卵」はふ化する生き物のたまご、二文字の「玉子」は食用のたまごを指す。ただし、食材としての鶏卵は生が卵、加熱したのが玉子。卵かけご飯、玉子丼といった具合。同じたまごでも意味合いが異なる▼焼き肉とバーベキュー、ピーマンとパプリカ、ジャガーとヒョウ、神父と牧師…。ここでは説明を割愛するが、「似て非なるもの」の数々である。行政や企業が組み合わせて使うことが多いあの言葉も。安全と安心▼科学的・客観的な根拠による「安全」、心理的・主観的な捉え方による「安心」。字面はそっくりだが、概念は対極にある。サービスや商品に対する満足度を高めようと、両立を目指すのはもっともである▼放射性物質は人体に影響を及ぼさないレベルだという。それでも抵抗感は根強い。数値上の安全が安心に直結するとは限らない。廃炉作業が進む東京電力福島第1原発で、処理水の海洋放出が決まった▼潮目の福島沖は豊かな漁場である。原発事故から10年、魚種や海域を限定した試験操業を経て、この春に本格操業へ舵(かじ)を切ったばかり。「魚を捕りたい」。生業(なりわい)をも脅かされる現状に、漁業者は諦めに似た嘆きを漏らす▼東電への信頼が再び地に落ちた現状で、そもそも安全は担保されるのか。当然ながら地元の反発を押し切った国の責任も大きい。廃炉と復興の完遂まで背負うべき重い十字架である。