衆院北海道2区補欠選挙が告示され、参院の長野選挙区補選と広島選挙区再選挙と合わせ春の衆参両院3選挙がそろった。25日の投票に向け与野党は総力戦を展開するが、国政選挙初陣の菅義偉首相は選挙区入りを回避する方針だ。感染の勢いが収まらない新型コロナウイルス対応を優先した形だが、敗北時の「責任論拡大を警戒した」(野党幹部)と見る向きもある。[br][br] 「難しく厳しい戦いだ」。自民党幹部は13日、3選挙についてこう漏らした。北海道、広島とも「政治とカネ」問題が発端で、北海道は不戦敗に追い込まれた。長野も野党議員の「弔い合戦」で苦しい状況が続く。世耕弘成参院幹事長は記者会見で首相の選挙区入りに関し「入った方がいいなら、入ればいい。現地の意向を尊重しながら考えるべきだ」と慎重な姿勢を示した。[br][br] 全国で一斉に競う通常の衆院選や参院選とは異なり今回は3選挙のみ。各党は「党の顔」を連日投入し、総掛かりでぶつかる。安倍晋三前首相は第2次政権時、四つの補選で応援に駆け付け、3勝をつかんでいる。[br][br] ただ、複数の党幹部は「首相の長野、広島入りは考えていない」と口をそろえる。猛威を振るう新型コロナへの対処や訪米を理由に挙げるが、別の事情も透ける。[br][br] 買収事件で河井案里前参院議員(自民離党)が当選無効となった広島の2019年参院選。当時、官房長官だった首相は街頭演説で「可能性の高い案里さんの名前を広めてほしい」と横に立つ河井氏を持ち上げた。[br][br] 首相が広島入りすれば、河井氏を応援した際の姿が報じられるのは間違いない。地元の広島県連幹部が、河井陣営を推した国会議員の来県に難色を示した経緯もあり、ベテランは「今回は静かにしていた方がいい」と話す。[br][br] 閣僚経験者は「不利な選挙といえども3敗したら、政権運営に影響が出るのは確実」と指摘する。敗戦を重ねたとしても首相が党内の批判を一身に浴びる事態は避けたいのが本音で、選挙の表舞台からは距離を置いていると解説した。参院幹部も「劣勢の選挙区に行くはずがない。衆院選を控え、負ける首相との印象を付けたくないはずだ」と首相の心情を代弁した。