孫の親代わりをしてきた祖母が、実母である娘を相手に、孫の世話をする監護者として自分を指定するよう求めた家事審判で、最高裁は認めない決定をした。民法を条文通り解釈し「父母以外は審判を申し立てることはできない」と初めての判断を示している。[br][br] 形式的な解釈で残念だ。従来の家裁実務にも反する。先例では父母が病気やドメスティックバイオレンス(DV)、生活困窮などでともに不適格な場合に、祖母らを指定した事例がある。ただし今は家裁、高裁で今回の最高裁と同じ理由を挙げて第三者は認めない傾向が見られ、それが追認された形になった。[br][br] しかし最近は離婚によるひとり親家庭の急増や核家族化など社会変化が著しく、多くの法的不備が露呈。事態改善のため子の意思や利益を優先的に考慮する新たな仕組みが不可欠だ。[br][br] 法務省の法制審議会は先月、家族法制部会で民法の離婚と離婚関連制度の見直しを始めた。今後、部会報告を受けて法制審が答申。政府には早急に改正法案を提示するよう求めたい。[br][br] 民法766条は離婚後の子の監護に必要な事項は「子の利益」を最優先に父母の協議で定め、協議が調わない場合には家裁が決めるとしている。しかし審判申し立てを父母以外の第三者ができるとする条文はない。[br][br] 明治時代に制定された民法は監護者を定めず離婚した場合、父が子の世話をするとしていた。戦後の改正民法も親子法制では戦前の家長権の色彩を残す部分があり、裁判所の法解釈や運用実務で補正してきた。[br][br] 民法の空白を埋めるため、監護に関する部会の意見取りまとめを急ぐ必要がある。検討課題として法務省からは、子の福祉増進に向けて、離婚後の父母が最適な監護ができる態様、民法の「子の監護をすべき者」などに関する概念の整理、子の意思・意見を反映させる方策の三つが提案された。[br][br] 監護者が祖父母や父母の兄弟姉妹らであっても児童相談所が関与したり監護補助者を決めたりして良好な成育環境が用意できるならば、むしろ子の福祉の増進にかなう。家裁では第三者の監護は父母ら親権者が子を虐待する場合などに限り許してきた。しかし現実には祖父母らが引き取るケースがかなりあるとの調査結果も見られる。[br][br] 父母の対立が激しくて協議が難航するとき、父母の教育・相談・援助などをする公私のサポート体制を用意している国もある。支援体制の構築も急ぎ、民法のリフォームを実現したい。