【原発処理水処分】海洋放出決定へ最終局面 漁業者の懸念強く

 全漁連会長らとの面会後、東京電力福島第1原発の処理水処分について記者会見する梶山経産相(奥)=7日午後、経産省
 全漁連会長らとの面会後、東京電力福島第1原発の処理水処分について記者会見する梶山経産相(奥)=7日午後、経産省
東京電力福島第1原発の処理水の処分方法として、海洋放出は当初から有力視されてきたが、漁業者の風評被害への懸念が高い壁となっていた。政府は決断できないまま足踏みが続いていたが、菅義偉首相と全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長との「トップ.....
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 東京電力福島第1原発の処理水の処分方法として、海洋放出は当初から有力視されてきたが、漁業者の風評被害への懸念が高い壁となっていた。政府は決断できないまま足踏みが続いていたが、菅義偉首相と全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長との「トップ会談」が7日に実現し、処分方針決定に向けた地ならしは最終局面を迎えた。[br][br] ▽先送り[br] 「全国漁業者の総意として反対。慎重な判断を求める」。昨年10月、経済産業省を訪れた岸会長は、梶山弘志経産相に強くくぎを刺した。[br][br] 同じ頃、経産省の担当者は福島県内の自治体を回り、海洋放出を前提とした説明を開始。10月中にも方針決定に持ち込む構えだったが、漁業関係者の猛反発に配慮せざるを得ず、決定を先送りした。[br][br] ▽危機感[br] こうした動きに、梶山氏は「丁寧に事を運びたい」とトーンダウン。風評被害対策の具体化や丁寧な情報発信に向け、各省庁での検討や関係団体との意見交換を重ねてきた。[br][br] 一方、東電は第1原発敷地内での処理水の保管容量は、早ければ2022年秋にも限界を迎えるとしている。放出準備だけでも2年程度かかる見込みだ。菅首相も「できるだけ早く政府として処分方針を決めたい」と明言。政府内では「一刻の猶予もならない」と危機感が募っていた。[br][br] そこに待ったをかけたのが、新型コロナウイルスの感染再拡大だった。1月には東京に緊急事態宣言が再発令され、経産省幹部は「岸会長が上京できず、対面での議論が積み上げられていない」と嘆いた。[br][br] ▽実績[br] 昨秋の決定先送りから5カ月余り。政府高官は「反発に対する冷却期間を置く意味合いもあった」と説明するが、7日の会談後、岸会長は「絶対に反対の立場はいささかも変わりはない」と、ぶれない姿勢を示した。[br][br] 全漁連は風評被害への対応や安全性の担保などを求めており、政府がどれだけ応えられるかが焦点となる。原発事故で一時全町避難となった福島県浪江町で漁業を営む50代男性は「政府がいくら対策に予算を付けたって、風評はそう簡単になくなるものじゃない。漁業再開のためにやってきたことが全てパーだ」と依然として不信は根強い。[br][br] 首相は岸会長との会談後、官邸で記者団の質問に応じたが、海洋放出という言葉は使わなかった。今後の折衝をにらみ、地元を刺激することを極力避けようとしたとみられる。政権幹部は「最終的にどう折り合いをつけるか、これからが正念場だ」と意気込む。[br][br] 一方、別の政府関係者は「全漁連にも立場があり、最後まで反対するのは織り込み済みだ。首相と岸会長が会って直接意見を交わしたという実績が重要だ」と強気だ。 全漁連会長らとの面会後、東京電力福島第1原発の処理水処分について記者会見する梶山経産相(奥)=7日午後、経産省