ヘビの捕食動画公開で告発 「生き餌は虐待か」一部で議論

 「ユーチューブ」に投稿された、ヘビがウサギを捕食する動画(日本動物虐待防止協会提供)
 「ユーチューブ」に投稿された、ヘビがウサギを捕食する動画(日本動物虐待防止協会提供)
動画を公開する前提でヘビに生きたウサギを餌として与えたら、それは虐待か―。動物愛護団体が昨年、動画投稿者を大阪府警に告発したことを契機に一部で議論が巻き起こっている。動物をみだりに殺傷することは法律で禁じられているが、飼育の一環で「生き餌」.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 動画を公開する前提でヘビに生きたウサギを餌として与えたら、それは虐待か―。動物愛護団体が昨年、動画投稿者を大阪府警に告発したことを契機に一部で議論が巻き起こっている。動物をみだりに殺傷することは法律で禁じられているが、飼育の一環で「生き餌」を与える行為ならば取り締まるのは困難。ただ動画には視聴者の興味を引くような演出もあり、問題を複雑化している。[br][br] 「動画には生き物が死ぬ瞬間が含まれます」。冒頭、真っ黒な画面に注意を促す文字が浮かび上がった後、大きなヘビがゲージの外に出た。好機をうかがい、そばに放置された生きたウサギに巻き付いて弱らせ、頭からゆっくりとのみ込む。一部始終を撮影した動画が昨年6月、ユーチューブで公開された。[br][br] 投稿者は「爬虫(はちゅう)類ユーチューバー」を名乗る大阪府の男性。印象的なBGMやテロップを流し、決定的な捕食の瞬間をスローモーションに編集する演出も手掛けていた。題材は生き餌だけでなく、ニワトリを食用にするため血抜きの手順を紹介したり、ハムスターの神経を切断したりする動画もあった。[br][br] 視聴者の通報を受けた日本動物虐待防止協会(横浜市)は同10月、男性を動物愛護法違反容疑で府警に告発した。男性は動画を削除。今年3月、取材に応じ「虐待ではなく、あくまで餌をあげるためだ」と主張した。[br][br] 生き餌は虐待に当たるのか。動愛法を所管する環境省は「禁じる規定はない」とした上で「死ぬまでに不必要に苦痛を与えると虐待になりうる」との見解を示す。飼育現場では一般的で、日本動物園水族館協会の担当者は「生きた動物しか食べない種もいる。残酷かもしれないが弱肉強食、食物連鎖が自然の摂理だ」と説明する。[br][br] 警察庁によると、動物の虐待事件は増加傾向で、動愛法違反容疑での摘発は2年連続で100件を超えた。虐待とおぼしき様子をインターネット上で拡散させて発覚し、立件につながったこともあった。こうした動画は近年、会員制交流サイト(SNS)の利用拡大とともに投稿が相次いでおり、管理側も必要に応じて削除するなどの対応をとっている。[br][br] 告発した団体は「再生回数を稼ぐために生命を軽んじており悪質だ」とし、不特定多数に公開した行為を問題視。ある警察関係者も「快楽のためだけに動物を虐殺し見せつける事例も一定数ある。標的がいつか人に変わり、凄惨(せいさん)な事件に発展しかねない」と懸念する。[br][br] だが、動物愛護法に詳しい神奈川大の諸坂佐利(もろさかさとし)准教授(公法学)は「今回の動画の場合、視聴するかどうかは選択の自由がある。餌を与えるという正当な理由があるならば、ただちに虐待とは認定しがたい」と指摘。「同法は、動物の殺処分を絶対的に禁止しておらず、何をもって虐待と認定するかはケースによって異なり、立場で見方が変わる。動画の投稿は表現の自由につながる問題であり、慎重な議論が求められる」と話した。 「ユーチューブ」に投稿された、ヘビがウサギを捕食する動画(日本動物虐待防止協会提供)