不正防止の法改正、逆手に 山梨県の社福法人乗っ取り

 社会福祉法人「大寿会」が運営する特別養護老人ホーム=1日、甲府市
 社会福祉法人「大寿会」が運営する特別養護老人ホーム=1日、甲府市
1990年に篤志家夫妻が設立、甲府市で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「大寿会(だいじゅかい)」の「乗っ取り」を図ったなどとして、山梨県警・大阪府警の合同捜査本部は2月から3月にかけ、社会福祉法違反(贈賄・収賄)容疑で理事長や貸金業.....
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 1990年に篤志家夫妻が設立、甲府市で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「大寿会(だいじゅかい)」の「乗っ取り」を図ったなどとして、山梨県警・大阪府警の合同捜査本部は2月から3月にかけ、社会福祉法違反(贈賄・収賄)容疑で理事長や貸金業の男らを逮捕した。相次いだ社会福祉法人の内部不正防止のため、2016年、同法に設けられた贈収賄罰則規定が初適用された事件。不正抑止が前進した一方、社会福祉法人のガバナンス強化を目的としたはずの法改正を逆手に取る手法が明らかになった。[br][br] 「5千万円を寄付する。理事会に入れてほしい」。18年春。「大寿会」の元理事によると、理事会に突如現れた男らがそう発言した。うち2人は、その後収賄容疑などで逮捕されるA男(49)とB男(49)だった。[br][br] これまで関わりのない「異質」な男らの接近に理事の一部は反発した。だが当時理事長だった設立者の女性の推薦を取り付け、2人は同年秋、理事に就任、後に理事長になった。女性を知る人は「高齢になり、後継者を探していたところに付け込まれた」と悔やむ。[br][br] そして背後には、さらに別の男らがいた。奈良県生駒市の貸金業C男(59)と、大阪市西区の金融ブローカーD男(62)。この2人は19年10月、「乗っ取り」の見返りとしてA男、B男に計1億円の利益供与をする約束をした贈賄容疑で逮捕された。[br][br] B男はこの時点で法人から3700万円を着服しており、20年に業務上横領罪の有罪が確定した。合同捜査本部は、各容疑者が入り組みながら、法人の保有資産や、安定的な報酬を狙った事件とみている。[br][br] 重要なポイントは、法人の「評議員」も買収されたことだ。C男は19年11~12月、大阪府議を含む意中の候補者を理事に選出させる見返りに、評議員5人=収賄罪で罰金などの略式命令=に現金20万円ずつを渡したとされる。[br][br] 16年改正の社会福祉法は、評議員会設置を義務化し、役員選任・解任の権限を持たせ理事会をけん制する役割とした。だが、捜査関係者は「反発する理事を排除するために、掌握しやすい評議員会が狙われた」と分析する。社会福祉に詳しい外岡潤弁護士は評議員について「多くはボランティアの延長で、役員の知人が務めている」と話す。[br][br] 法改正の趣旨が悪用される構図となった事件。外岡弁護士は「評議員は多くの場合、理事側の決定を容認するだけで、監視機能は形骸化している。ガバナンス強化のため、新たな工夫が必要だ」と指摘した。 社会福祉法人「大寿会」が運営する特別養護老人ホーム=1日、甲府市