【コロナまん延防止措置】往来抑制、打つ手乏しく 

 大阪・ミナミを歩くマスク姿の人たち=2日午後4時42分
 大阪・ミナミを歩くマスク姿の人たち=2日午後4時42分
政府が宮城、大阪、兵庫の3府県に適用を決めた「まん延防止等重点措置」は、特定の地域を絞って新型コロナウイルスを封じ込める狙いがある。専門家は関西で流行する変異株が拡散しないよう他地域との往来自粛の重要性を訴えるが、重点措置の目的を考えると効.....
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 政府が宮城、大阪、兵庫の3府県に適用を決めた「まん延防止等重点措置」は、特定の地域を絞って新型コロナウイルスを封じ込める狙いがある。専門家は関西で流行する変異株が拡散しないよう他地域との往来自粛の重要性を訴えるが、重点措置の目的を考えると効果は期待しづらい。入学や転勤のシーズンを迎え、人の動きは既に活発化。政権はより強力な緊急事態宣言の発令には消極的で、打つ手に乏しいのが現状だ。[br][br] ▽慣れ[br] 「みんなで集まってもいいやんかということになると、感染が広がる可能性がある」。大阪府の吉村洋文知事は府外への不要不急の外出自粛を要請した1日、報道陣にまくし立てた。大型連休中の帰省や旅行も控えるよう求めたが、府の幹部は「府民も慣れてしまった。人出は減らないだろう」とため息をつく。[br][br] 都道府県単位での対策を想定し、首都圏や関西圏を一体とみて網を掛けてきた宣言に対し、重点措置は都道府県全体に感染が広がる前に限られた地域の火種を消すのが目的。飲食店でのマスク着用徹底といった、「面」よりも「点」に軸足を置いた対策が中心になる。[br][br] ▽実効性[br] 感染者が急増する大阪や兵庫では、検査対象者のうち英国由来の変異株の割合が週ごとに高くなり、3月下旬には過半数を占めた。この変異株は感染力が従来に比べ1・7倍に高まっているとの報告がある。専門家は関西圏での感染者急増の理由に、首都圏より3週間早く宣言が解除されたことと、変異株が広がったことの二つを挙げる。[br][br] 「大阪の変異株が東京で広がったら大変なことになる」。関係者によると、1日の基本的対処方針分科会ではこうした危機感が共有された。ただ、東京と各地をつなぐ新幹線や航空便の利用状況は重点措置の決定前から上向いている。政権幹部は「東京は全国とつながっているから特別。東京で感染が急増したら宣言だ」と話す。[br][br] 感染者が微増傾向で踏みとどまっている首都圏での変異株拡大は防げるのか。分科会メンバーの釜萢敏・日本医師会常任理事は「移動制限が重要な点だが、宣言でも制限が難しい中で実効性を担保できるような方法が打ち出せるだろうか」と疑問を呈した。[br][br] ▽認識不足[br] 政府関係者は、国内での変異株拡大のスピードは想像を超えていると懸念する。関西で驚異的に広がっているとの認識を関係閣僚が共有したのは、重点措置を正式に決めた前日の3月31日夜。官邸で開かれた会議の場だった。この関係者は「厚生労働省のアピールが不足していた」と認める。[br][br] 菅義偉首相は首都圏での変異株の爆発的拡大に警戒を強めるが、ワクチン接種の普及までは対策に限界があるのは否めない。首相周辺は「接種が広がるまで、当面は3密(密閉、密集、密接)の防止など今までと同じ対策を講じるしかない」と苦しい心境を明かす。[br][br] 京大の依田高典教授(行動経済学)は「初の宣言時は『人との接触を8割減らす』など具体的なメッセージが発信されたが、今回はなかった。首相も国民の心に届く言葉を持っておらず、重点措置で行動変容は期待できない」と分析。「国民の側も自らのリスクとてんびんに掛け、目の前の楽しいことを選んできた。その結果が現在の感染拡大だ」と指摘した。 大阪・ミナミを歩くマスク姿の人たち=2日午後4時42分