通信アプリLINE(ライン)の名前やメールアドレスなどの個人情報が、業務委託先である中国の関連会社から閲覧できる状態になっていた問題が明らかになり、国民の懸念が高まった。あらためて個人情報管理の厳格化が求められる。[br][br] LINEの出沢剛社長は記者会見で「ユーザーへの配慮が足りなかった」と謝罪し、中国からのアクセスを遮断し、韓国のサーバーに保存していた画像や動画などのデータをすべて国内に移す決定をしたと述べた。[br][br] 中国は2017年に制定した国家情報法で、国民や企業に対し国の情報活動に協力するよう義務付けており、個人情報が当局に渡るリスクがある。それだけに、閲覧できる状態を放置していたのは軽率だったと言わざるを得ない。[br][br] LINEのアプリは8600万人が使用、新型コロナウイルスワクチン接種の予約など行政サービスでも利用される。単なる情報交換手段の役割を超えて、社会インフラに組み込まれていることを自覚すべきである。[br][br] LINEと経営統合したヤフー親会社Zホールディングス(ZHD)の共同最高経営責任者(CEO)に就任した川辺健太郎ZHD社長と出沢LINE社長は、20年代前半にインターネット通販の取扱高で国内1位を目指すと強気な発言をしていた。だが、LINEの情報管理の在り方はそれに見合うものなのか。事業を拡大する前に個人情報の管理体制を抜本的に見直す必要がある。[br][br] デジタル化が進めば、ネット通販などを利用する機会が増え、これに個人情報がひもづけられる。今回はこうした個人情報の一部が閲覧可能になっていただけだ。しかし他社の例では、情報の流出、さらには悪用といった事例も報告されている。[br][br] そこで求められるのは、個人情報にアクセスできる権限を極力限定することだ。データを海外から日本に移しても情報セキュリティーが完璧とは言えない。日本企業の多くは、担当者や社員が情報を外部に持ち出したりはしないだろうという「性善説」に立ってきた。だが、個人情報の保護のためには担当者といえども信用しないという「性悪説」に基づいた管理体制を再構築すべきではないか。[br][br] こうした方針を徹底すると、社員との信頼関係にも影響する恐れがあるが、情報の安全性を最大限確保するためには、これまでの甘い考え方から決別する時期が来ている。個人情報を守れない企業はビジネスをする資格がないと心得るべきだ。