【北奥羽のクマ事情】(9・完)敬意持ち、自然と接して

樹上のツキノワグマ=2020年9月、十和田市宇樽部地区
樹上のツキノワグマ=2020年9月、十和田市宇樽部地区
北東北3県にまたがるこの北奥羽地方には、大型の哺乳類であるニホンツキノワグマのいる山や、クマのすめる環境がまだ残っています。これはとても貴重なことだと思います。しかし、前回のアラスカや知床などと比べると、結構ぎりぎりのところで残っている状態.....
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 北東北3県にまたがるこの北奥羽地方には、大型の哺乳類であるニホンツキノワグマのいる山や、クマのすめる環境がまだ残っています。これはとても貴重なことだと思います。しかし、前回のアラスカや知床などと比べると、結構ぎりぎりのところで残っている状態です。[br][br] クマが多く生息する地域の一部は、十和田八幡平国立公園の区域内です。隣接する区域外の秋田県鹿角市十和田大湯の田代平から熊取平を見れば、平らなところは切り開かれ、沢の部分だけ元の植生が残っている感じです。さらに近くでは、樹木の伐採が進んでいる箇所がいくつもあります。かろうじて残っている森は、一度失われたら100~200年の単位では再生されないでしょう。それだけ貴重だと思います。[br][br] もちろん、全く手付かずで残せるとは思いません。クマを捕るなと言っているわけでもありません。この地に暮らす人々が長年培ってきた、自然と付き合う少しの敬意を持って臨むならば、これからもクマと人間は折り合いをつけて共存できると思うのです。[br][br] ちなみに、2020年1~11月に捕殺されたニホンツキノワグマの数(暫定)は、全国で5622頭。東北6県は青森156、岩手423、秋田602、山形465、宮城256、福島844。他に多いのは、群馬482、新潟555で、北海道のヒグマは含まれていませんが、660です。約11カ月間で、これだけ捕殺されているのです。[br][br] その理由は人間の活動領域に入り込んだというのがほとんどでしょうが、駆除されたクマがこれだけいるということは驚きです。この状況でさらに人間が何の工夫もなく、山や森を切り開き続けるならば、いずれこの地にクマはいなくなってしまうかもしれません。そして、その影響はヒトという動物に、しっぺ返しのように及ぶのでしょう。[br][br] そうならないためにも、クマがすめる自然のありがたさに心を配り、少しでも後世に残していかなければならないと思っています。その象徴として、これからもクマを撮り続けたいと思います。[br](岩村雅裕)樹上のツキノワグマ=2020年9月、十和田市宇樽部地区