天鐘(3月29日)

ペトロはイエス・キリストの一番弟子。捕縛された師を案じて屋敷に紛れ込んだが、疑いの目を向けられる。詰問に「私は関係ない」と、しらを切ること3度。すると最後の晩餐での予言通りに、ニワトリの鳴き声が響いた▼聖書に描かれる「ペトロの否認」である。.....
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 ペトロはイエス・キリストの一番弟子。捕縛された師を案じて屋敷に紛れ込んだが、疑いの目を向けられる。詰問に「私は関係ない」と、しらを切ること3度。すると最後の晩餐での予言通りに、ニワトリの鳴き声が響いた▼聖書に描かれる「ペトロの否認」である。ペトロは己の弱さを思い知る。キリストの遺志を継ぎ、迫害を受けながらも教えを広めた。邪念を払い、目覚めを導いたニワトリ。多くの教会の尖塔(せんとう)には風見鶏が立つ▼風見鶏は風が吹く方向に頭を向ける。それ故に日和見主義も形容するのだが。見方を変えれば、逆風にも悠然と前を向いている。聖書の精神性を踏まえれば、強い信念の象徴とも言えるだろうか▼世界の第一線で奮闘する高梨沙羅選手に、そんなことを思った。スキージャンプのW杯で、男女を通じて歴代最多となる109回目の表彰台。通算60勝も前人未到。順風満帆に見えるが、苦悩の歩みも重なる▼かつて無類の強さを誇った絶対女王も、近年は思うような結果を残せなかった。自分と向き合い、技術をゼロから見直した。覚悟があれば、逆境は飛躍のバネになる。個人総合優勝こそ逃したものの、今季は復活を印象付けた▼夏季の東京五輪が開催の是非で揺れる中、気付けば冬季の北京五輪まで既に1年を切った。意志を貫き、自信を胸に、気まぐれな風も味方につけて。もう一つの勲章を手にしてほしい。