新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が首都圏1都3県を最後に2カ月半ぶりに全面解除された。感染者の微増傾向が全国的に続き、2週間の再延長はあまり意味がなかった。宣言の効果はこれ以上期待できず、苦渋の判断だった。飲食店への営業時間の短縮要請は緩められたが、リバウンド(感染再拡大)抑制の手を抜いてはいけない。[br][br] 解除後の1カ月はウイルスを制御できるかの分岐点になる。新型コロナ流行の行方を左右する重要局面といえる。菅義偉首相は飲食店対策や変異株対策強化、モニタリング検査など5本柱の総合対策を示したが、新味を欠き、リバウンドを抑える確かな保証はない。[br][br] 検査が少ないのは日本の対策の弱点だったので、その拡充に転じたこと自体は評価できる。モニタリング検査を広げて実施状況と結果を日々公表し、再拡大の兆しをいち早く察知してブレーキをかける仕組みを構築すべきだ。高齢者施設の集団発生も増え続けている。入所者や職員らに定期検査を導入し、感染の芽を摘むよう努めてほしい。[br][br] ただ、検査を増やしても感染爆発を防ぎきれないことは海外の経験で明らかだ。3密を避けてマスク着用などの予防の基本を守るしかない。コロナウイルスはしつこく、変わり身が早い。対策も進化させ、自粛一辺倒ではない持続可能な策で乗り越える道を探りたい。[br][br] 政府の対策分科会の尾身茂会長は「これまでの延長線上にない対策が必要」と訴えた。それは何かが問われる。緊急事態宣言の前段階として市町村の地域限定で対策を強化できる新設の「まん延防止等重点措置」を使う選択肢はある。その基準づくりを急ぐべきだ。[br][br] ワクチン接種の加速や医療体制整備、医療機関の連携強化も着実に進めたい。海外から入った感染力の強い変異株の拡大が今最も懸念される。既に全国で確認されており、5、6月の第4波につながる恐れは強い。3度目の緊急事態宣言を避けるためにも第4波阻止は欠かせない。[br][br] 観光支援事業「Go To トラベル」の要望は地方で多いが、全国的な再開はまだ早い。感染再拡大のブレーキの対策を優先し、アクセルを踏むのは控えるときだ。[br][br] 選抜高校野球に続いてプロ野球開幕は近い。東京五輪の聖火リレーも始まる。花見など人出は増えるばかり。長い自粛の疲れや慣れが目立つ。リバウンドを可能な限り抑えながら、第4波を阻む思いを胸に、らんまんの春を静かに味わいたい。