【新型コロナ】留め置かれる認知症患者 入院回復後も行き場なく長期化

 東京都世田谷区の都立松沢病院で、新型コロナ患者の治療に当たる医療従事者=2月(同病院提供)
 東京都世田谷区の都立松沢病院で、新型コロナ患者の治療に当たる医療従事者=2月(同病院提供)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う病床逼迫(ひっぱく)で、認知症や精神疾患のある感染者が入院できずに治療設備のない介護施設や精神科病院にとどまらざるを得ない事態が相次いだ。入院できても回復後の受け入れ先が見つからず、長期入院を強いられるケー.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う病床逼迫(ひっぱく)で、認知症や精神疾患のある感染者が入院できずに治療設備のない介護施設や精神科病院にとどまらざるを得ない事態が相次いだ。入院できても回復後の受け入れ先が見つからず、長期入院を強いられるケースも。認知症や精神疾患があると人手がかかる実情もあり、関係者は「内科医らの応援体制が必要」と訴える。[br][br] ▽覚悟[br] 全国有数の病床と歴史を持つ精神科病院「東京都立松沢病院」(世田谷区)。昨年4月にコロナ病棟を設置し、認知症や統合失調症を伴う軽症や中等症などのコロナ患者222人(今月15日時点)を積極的に受け入れてきた。[br][br] 都内には精神科病床がある病院が約100存在。常勤の内科医がいない所が多く、コロナ治療ができるのはごくわずかだ。当初用意した18床は昨年6月、クラスター(感染者集団)が発生した精神科病院からの患者受け入れですぐに埋まり、急きょ24床に増やして乗り切った。[br][br] 「民間病院の依頼は断らないのがポリシーだ」と斎藤正彦院長。だが、第3波到来であちこちの精神科病院や介護施設でクラスターが起きると再び満床に。「さらに患者が増えたら45床まで引き上げよう」と覚悟を決めたこともあった。[br][br] ▽6割転院できず[br] ただ、松沢病院のような医療機関に入院できる人はごくわずかだ。日本精神科病院協会(日精協、東京)の会員調査によると、精神科病院の入院中に陽性が判明した人のうち、約6割が治療できる病院へ転院できなかったと回答。理由として「精神症状によるもの」という声が複数あった。[br][br] 精神患者の中には安静を保てない人もおり、対応に多くの人手が必要となったり、他の患者や職員への感染リスクが高まったりする可能性もある。斎藤院長は「病院や施設で対応せざるを得ないなら、内科医を派遣するなどの仕組みを行政は作るべきだ」と話す。[br][br] ▽偏見[br] 回復して退院基準に達しても、感染を恐れる施設や病院が受け入れてくれず、長期入院を余儀なくされるケースもある。[br][br] 「今もコロナに対する世間の偏見は根強い」と話すのは、東京精神科病院協会の平川淳一会長。自身が病院長を務める病院でも、介護施設に回復後も入所を断られた元患者を約1カ月入院させたことがあったと明かす。[br][br] 平川会長は、受け入れへの不安は精神科病院にもあり、人手不足が大きな要因だと指摘。「もともと精神科病院の配置基準は一般病院よりも低く、勤務医も少ない。職員1人の感染が致命的となるので、協力したくてもできないのが実情だ」[br][br] 厚生労働省は今月、精神疾患の入院患者らをワクチンの優先接種の対象に加える方針を決定。平川会長は「人手や病床を増やすことも重要だ。今は早くワクチンが打てるようになってほしい」と話した。 東京都世田谷区の都立松沢病院で、新型コロナ患者の治療に当たる医療従事者=2月(同病院提供)