介護保険料の上昇が止まらない。必要な介護サービスは確保したいが、住民のために保険料は抑えたい―。あの手この手で策をこらす自治体にも手詰まり感がにじむ。人口の多い団塊の世代が間もなく75歳以上になり、高齢化は加速。専門家は「保険料のさらなる引き上げは避けられない」とみており、制度の持続性を危ぶむ声もある。[br][br] ▽年金でやりくり[br] 4月以降、大阪市の65歳以上の保険料(基準額)は月額8094円に。今回調査した自治体では最高額だった。「年金でどうにかやりくりしている。保険料が高くなると家計が圧迫される」。保険料を固める前に行ったパブリックコメントには引き上げに反対する市民の声が相次いだ。担当者は「(家族のケアがない)単身高齢者の割合が高く、1人当たりの費用も高い」と話す。[br][br] 自治体は3年に1度、サービス利用の推計を出し、保険料を決める。一般的に利用者が増えれば、保険料は上がる。低所得の人の保険料は基準額から軽減し、逆に高所得の人は増える仕組みだ。[br][br] 大阪市は基準額の引き上げを抑えるため、11段階だった保険料の階級を15段階に細分化。支払い能力のある高所得の人の負担をより重くした。最も高い所得区分の人は月約1万8千円になる。[br][br] ▽税収減[br] 新型コロナウイルスの感染拡大は介護保険料にも影を落とす。 介護予防の取り組みが盛んで、要介護認定率が低いことで知られる埼玉県和光市。これまで全国平均より千円以上安かったが、4月から月約850円引き上げ5455円になる。コロナで税収が減ったことが影響し、引き上げにつながった。[br][br] 一方、保険料を据え置いたり、引き下げたりする自治体もある。福井県越前市は高齢者が地域の身近な場で体操や交流を楽しむ「通いの場」が200カ所以上に広がり、要介護認定率が全国平均を下回るようになった。積み立てた基金を取り崩し、保険料を維持する。担当者は「コロナの経済的な影響も考慮した」と話す。[br][br] ▽限界[br] 2000年の介護保険発足時、全国平均は月2911円だったが、見直しのたびに上昇。当初は「月5千円が負担の限界」と言われたが、15年度以降5千円台が続き、4月以降は6千円前後となりそうだ。[br][br] 自治体からは「このままでは保険料が許容できる水準を超えてしまうことが危惧される」(前橋市)「保険料上昇が続くと年金だけでは生活が厳しくなる。利用時の1割負担を払えず、利用したくても利用できない人が出ることが懸念される」(高松市)との声が上がる。[br][br] 東洋大の高野龍昭(たつあき)准教授は「高齢者の増加やサービスの伸びから見れば大幅に上がる可能性もあったが、想定より抑えた自治体が多い」とみる。その上で「サービスと保険料は表裏一体。必要なサービスのためには保険料引き上げは避けられない。ただ、年金額は上がらず、高齢者の負担感が増している」と指摘する。