総務省接待問題の渦中にあるNTTの澤田純社長と東北新社の中島信也社長が15日、参院予算委員会に出席し、国民の疑念を招いたとして謝罪した。澤田氏は会食の詳細を明かさず、便宜を働き掛けたこともないとの釈明に終始、政府との一体ぶりを見せつけた。他方、東北新社の外資規制違反を巡っては中島氏から今後の火種となる新証言が飛び出し、議場がどよめく場面もあった。[br][br] ▽鉄壁[br][br] 「個別の会食については控えさせていただく」。澤田氏は、菅義偉首相との会食の有無を問いただす福山哲郎氏(立憲民主党)に対し、顔色一つ変えずに繰り返した。[br][br] これまで首相や武田良太総務相は、自身の会食の有無には直接答えず「国民の疑念を招くような会食に応じたことはない」との説明に終始している。澤田氏は一部会食の事実を認めつつ、政治家らの説明範囲を超えた新事実に言及することはなかった。[br][br] 週刊文春がNTTの接待問題を報じた今月初め以降、澤田氏は自宅に帰らない日が続いた。議員の質問に対し即座に手を挙げ、よどみなく発言する姿は、入念な準備をうかがわせた。あるNTTの関係者は「鉄壁だった」と評した。[br][br] 対照的だったのが中島氏だ。質問を受けると席の後ろを振り返り、しばらく説明を受けてから挙手する場面がたびたびあった。引責辞任した前任社長の後を受け、副社長から急きょ昇格したのは2月26日。総務省の調査では、中島氏は接待に同席していなかった。回答の末尾で「私はこう報告を受けています」と付け加えるなど、表情には戸惑いが感じられた。[br][br] ▽担当者名[br][br] そんな中島氏から飛び出したのが、外資規制違反を巡る新事実だ。与党議員との質疑の中で、東北新社の担当者が2017年8月4日に違反に気付き、9日ごろ総務省の担当部局に面談で伝えたと説明。次に質問した福山氏には、総務省側の担当者名も明かした。[br][br] 東北新社は同年10月、問題となった衛星放送事業を子会社に承継させている。中島氏の説明通りなら、総務省が違法性を認識したまま子会社の承継を認めたことを意味し、単純な審査ミスとの釈明は通じなくなる。[br][br] 慌てた総務省は、吉田博史情報流通行政局長が「当時の担当者に確認したが、報告を受けた覚えはない」と答弁。武田総務相は、第三者の検証委員会での真相究明を求めると述べ、目の前の批判をかわすのが精いっぱいだった。[br][br] ▽手回し[br][br] 政権はこれ以上の問題拡大を防ごうと懸命だ。予算委の冒頭で「NTTが国会議員と会食したのは事実か」と問う自民党議員の質問に、澤田氏は会食相手として「与野党の国会議員をはじめとした有識者」と答えた。[br][br] これを見た自民党幹部は「これで野党も騒げないな」と笑みを浮かべた。野党議員もNTTの接待を受けたのではないかとの情報を耳にし、この答弁を引き出すべく手回ししていたという。野党側へのけん制が狙いだ。[br][br] 政権側は15日の参考人招致について「幕引きを図る切り札」(政府関係者)と位置付けていたが、問題収束の道筋が付いたわけではない。総務省の幹部職員計144人を対象にした調査はこれからだ。東北新社の外資規制違反問題も残り、官邸筋は「火種は依然、くすぶり続けている」と懸念を隠さない。[br][br] 立民幹部は、武田氏を含む歴代政務三役について「大臣規範に抵触する接待を受けていたのではないか」と疑念の目を向ける。野党は今後も追及を続ける構えだ。