14日に投開票が行われた東通村長選で、村の未来を託されたのは新人の畑中稔朗氏だった。告示直前の出馬表明で、当初は村の厳しい財政運営を背景に、電力事業者との信頼関係が厚い、7期目を目指した現職有利との見方もあった。一方で電力事業者頼みの村の財政運営は硬直化しているのが現状だ。これまでの村政と同様に「原発との共生」を掲げる畑中氏。「村民の不安を拭い去る」と訴えた新たなかじ取り役には、村民の期待に応え、村の将来像をしっかりと示してほしい。[br][br] 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故で、村を取り巻く環境は大きく変化した。村内では東電原発の建設工事と、東北電力原発の運転が相次いでストップ。経済の低迷が続き、閉塞(へいそく)感が広がっていた。現職も「震災以降の10年間、期待に応えられていない」と認めていた。[br][br] 村の行財政計画も崩れた。特に影響が大きいのが東電原発だ。当初の予定通り、2016年度に運転を開始していれば、村には18年度から50億円程度の固定資産税が見込まれていた。[br][br] 村はその歳入を当て込み、生活環境基盤整備や水産振興事業などに投資をしてきた。現在、その投資を支えてきた地方債の元利償還金や施設老朽化に伴う修繕・改修費用により、かつてない厳しい財政運営を強いられている。[br][br] 村は東電や東北電から企業版ふるさと納税を受けるなど財源確保に腐心している。だが、こうした“配慮”はいつまで受けることができるのか。今なお原発の建設工事再開と再稼働は見通せず、共生の名の下に進められた過度な依存が共倒れを招きかねない。