天鐘(3月12日)

突然、誰かに「あなたは孤独でしょう?」と聞かれたら、大概は「失敬な! 忙しくて孤独なんかに浸っていられない」と憤慨するに違いない。普段は孤独を嘆いていても、「はい」と頷く人は少ないだろう▼2万2000人が犠牲になった東日本大震災から10年。.....
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 突然、誰かに「あなたは孤独でしょう?」と聞かれたら、大概は「失敬な! 忙しくて孤独なんかに浸っていられない」と憤慨するに違いない。普段は孤独を嘆いていても、「はい」と頷く人は少ないだろう▼2万2000人が犠牲になった東日本大震災から10年。岩手、宮城、福島の被災3県ではこの間、仮設住宅や復興住宅で、600人以上に上る「孤独死」が相次いだ▼命は取り留めたが家族も家も仕事も失った喪失感。孤独に耐えきれず一人で呷(あお)る酒。特に将来を悲観した中年男性がアルコールに依存、健康を害して誰にも看取られず、先立った家族の後を追う孤独死が多かった▼そしてコロナ禍。職を失った女性や友達のいない若者の自殺が増加している。独り暮らしの高齢者は“唯一の友達はテレビ”。社会の歪みや災害の亀裂からこぼれ落ちた孤独が日常のそこここに転がっている▼英国は3年前、慢性的な孤独は死期を早め、認知症リスクも高めると、世界に先駆け「孤独担当相」を新設。孤独を政策課題に取り上げ解消に努めている。健康被害が経済に及ぼす損失は年4・7兆円に上るとか▼菅政権も2月「孤独・孤立担当相」を置き、実態把握に努めるが難航必至。その一歩は「孤独を認めて自分を責めない」だが、英国も7割は認めず固い殻を閉ざしてしまった。心の殻を開けるには忖度や接待では無理。本物の心の鍵しかない。