19日開幕の選抜高校野球大会(センバツ)で、青森県立八戸西高が春夏通じて初の甲子園に挑む。初戦の対戦相手も決定。ナインらは練習試合などを通じて一冬の鍛錬の成果を確認しながら、本番に向けてさらなる課題の発掘、克服に余念が無いことだろう。[br] 1975年の学校創立とともに産声を上げた同校野球部だが、創部4、5年目の78、79年に夏の青森大会で準優勝。そう遠くない日に聖地の土を踏んでくれる―。ファンもそう信じていたに違いない。ただ、現実は甘くなかった。過去には春の県大会で優勝経験はあるものの、甲子園の切符が懸かる夏、秋の大会は善戦止まり。近年は県内外から野球少年が集まる強豪私学の台頭などもあって、厳しい戦いを強いられてきた。[br] 現在の小川貴史監督は同校OBで、高校時代は悔し涙を流した一人だ。八戸高等支援学校(八高支)勤務の外部指導者ながら、どうにか母校を甲子園に―と、2019年にチームを率いて以来、同じOBで元プロ野球選手の中村渉氏らと連携してチームづくりに取り組んできた。[br] 強豪私立高のように練習に多くの時間を確保できない中、投手と野手が別メニューでトレーニングするなど、“練習改革”を推進。SNS(会員制交流サイト)も活用して部員一人一人とつながり、動画やメッセージのやりとりなどで密にコミュニケーションを図り、効率的なレベルアップに努めている。[br] 小川監督は勤務先の生徒とナインの交流にも注力する。代表的な取り組みが「リサイクルボール」だ。障害のある生徒に「誰かの役に立てる仕事」を与えたい―との思いから、使い古した野球ボールをビニールテープで補修する作業をカリキュラムに取り入れた。ナインが八高支を訪問してボールの補修を体験したり、別のスポーツで一緒に汗を流したりすることも多く、相互理解と絆を深めている。[br] 昨秋はこれまでの取り組みが見事に花を咲かせた。初の秋の東北大会で公立校としては数少ない8強入り。先のセンバツ出場校選考委員会では、障害の有無にかかわらず一緒に学ぶ教育「インクルーシブ教育」にも取り組んでいるとして、野球以外の活動も評価を受け、21世紀枠で選出された。同枠では県勢初選出で、他の公立校にとっても励みになるだろう。[br] センバツへの県勢の公立校出場は、弘前工以来36年ぶり。21日に予定される初戦では、臆せず油断せず、はつらつとベストを尽くしてほしい。