政府は首都圏1都3県への新型コロナウイルス緊急事態宣言を2週間再延長した。21日まで我慢が続くことになった。菅義偉首相は病床の一部逼迫(ひっぱく)を理由に挙げるが、難しい選択だった。飲食業などには厳しい判断で、初夏の流行を抑えるため窮余の布石といえる。[br][br] 緊急事態宣言で新規感染者数は第3波ピーク(1月前半)の8分の1程度まで減った。しかし、宣言が1日に解除された6府県に比べ、首都圏は感染者が下げ止まっている。最近は首都圏が全国の新規感染者の6割前後を占めており、全国の再拡大の源になりやすい。もう一段の感染抑制が必要な局面である。[br][br] 政府が宣言解除の条件としていた最も深刻な「ステージ4」は1都3県でいずれの指標も脱しており、解除する選択もあり得た。ただ、感染力が高い英国型などの変異株が各地で広がっており、流行再燃の恐れは強い。[br][br] もっとも宣言が再延長された2週間で何ができるかは疑わしい。ウイルスはしつこい。減少率の鈍化は予想通りで、対策も限界に近い。宣言が長引くほど疲れや慣れは増す。高齢者施設の集団感染を察知するための検査拡充や、変異株の監視強化ぐらいしか具体策は浮かばない。[br][br] 日本は外国のような厳格な都市封鎖でなく、人々の予防努力や自粛に頼ってきた。今回の緊急事態宣言は飲食店の営業時間短縮が主な柱で、人の接触の最大8割減を訴えて全国一律に一斉休校した昨年春の1回目の宣言より限定的で緩い。人出も十分減らなかった。[br][br] 再延長の効果はほどほどだろう。経済への打撃もある。主導権争いのような政治ゲームに陥らずに緊急事態の出口を冷静に見極めるべきだ。解除後も段階的に緩和し、再拡大させないことが目標になる。初夏に次の第4波が来るか、小さな波を繰り返しながら収束に向かうか、予断を許さない。第4波を阻むためには再拡大防止が鍵を握る。[br][br] 厚生労働省の人口動態統計速報では昨年の出生数が過去最低となり、少子化が際立った半面、死亡数は11年ぶりに減少した。コロナ下でも医療は何とか持ちこたえた。今冬はインフルエンザが珍しく流行しなかったが、12月からのコロナ第3波は大きく、死者は6千人を超えた。第4波の阻止は最重要課題だ。[br][br] 3、4月は別れと出会いの季節。桜前線も列島を北上する。今年は歓送迎会などで騒ぐのを控え、静かに春の気分に浸りたい。ワクチン接種や医療体制、治療の充実が着実に進めば長い我慢の期間も先が見えてくる。