天鐘(3月5日)

上に立つ者の心構えはいかにあるべきか。中国の古典が基の「戒石銘」と呼ばれる一文がある。〈爾(なんじ)の俸(ほう)、爾の禄(ろく)は/民の膏(こう)、民の脂(し)なり/下民(かみん)は虐げ易(やす)きも/上天(じょうてん)は欺き難し〉▼お前が.....
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 上に立つ者の心構えはいかにあるべきか。中国の古典が基の「戒石銘」と呼ばれる一文がある。〈爾(なんじ)の俸(ほう)、爾の禄(ろく)は/民の膏(こう)、民の脂(し)なり/下民(かみん)は虐げ易(やす)きも/上天(じょうてん)は欺き難し〉▼お前が手にする俸給は民の汗の結晶である。それを忘れて人々を虐げるのであれば天罰が下る―との意味である。特に公務員が心に留めるべき教えだとして、座右の銘に刻む者も多いと聞く▼思い出す人がいる。森友学園問題で上司に文書の改ざんを命じられ、悩み抜いた末に自ら命を絶ったとされる元財務省近畿財務局の赤木俊夫さん。「私の雇い主は国民。国民のために仕事ができることが誇り」と生前、語っていた▼組織の圧力と良心との狭間(はざま)で苦悩した。手帳に挟んだ「国家公務員倫理カード」を読み返し、自問していたらしい。公正な職務執行、国民全体の奉仕者…。並ぶ規定が胸を突いたことだろう▼国家公務員倫理法ができたのは、23年前の旧大蔵省幹部による接待汚職事件がきっかけだった。大いなる批判と反省の下に『倫理規程』も作られた。それでもまた繰り返された役人たちへの違法接待。募るのはやりきれなさである▼会食の前に倫理カードを見返す者はいなかったか。いや、もしかしたらカードからあえて目をそらさねばならぬほどの人物の顔が浮かんだのかもしれぬ。官僚と政治家との力関係。雇い主として、大いに気になるところである。