【連載・つながる復興道】(3)復興バブルの終焉

急ピッチで整備が進む三陸沿岸道路。工事には多くの地元業者が携わっている=2月末、久慈市長内町
急ピッチで整備が進む三陸沿岸道路。工事には多くの地元業者が携わっている=2月末、久慈市長内町
復興道路、復興支援道路の総事業費は約2兆円、八戸―宮古間だけでも事業費は5千億円超に上るとされる。三陸沿岸道路をはじめとする道路、防潮堤、土地のかさ上げといったインフラ復旧工事は復興特需を生み、北奥羽地方でも大きな経済効果をもたらした。 「.....
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復興道路、復興支援道路の総事業費は約2兆円、八戸―宮古間だけでも事業費は5千億円超に上るとされる。三陸沿岸道路をはじめとする道路、防潮堤、土地のかさ上げといったインフラ復旧工事は復興特需を生み、北奥羽地方でも大きな経済効果をもたらした。[br][br] 「仕事がありすぎて常に人が足りない状態。どうやって確保するか、そればかり考えていた」。下舘建設(久慈市)の下舘康見代表(71)は、繁忙期が続いた10年間を振り返る。 震災前、地元建設業界はどこも青息吐息だった。リーマンショック後に続いた不景気で民間工事はもちろん、公共工事も少なくなり、廃業に踏み切る業者もあった。そんな状況が震災で一変した。[br][br] 津波による甚大な被害で復興事業はかつてない規模に。同社もピーク時は岩手、宮城両県で30件近い復興事業を同時に進め、売上高は震災前の2倍以上となった。ただ、ハード事業は最終盤を迎え、同社が現在受注している6件も近く完了する。需要は縮小し、復興バブルの終焉(しゅうえん)が近づく。[br][br]   ◆    ◇[br][br] 復興特需で建設会社の経営状態は大幅に改善し、数年は持ちこたえられる内部留保ができたとみられる。しかし、その先は大幅な受注減が予想され、再び冬の時代に突入する。[br][br] 下舘代表は、被災地の建設業界にとって復興の代わりとなり得る事業はない―と言い切る。半導体や自動車産業の集積が進む北上川流域に進出し、地元以外で新たな仕事を獲得することも視野に入れる。[br][br] 限られたパイを奪い合う競争激化が予想される中、「われわれは遠くでも仕事があるところに行くしかない。企業として体力があるうちに、生き延びる方策を考えなければ」と強い危機感を抱いている。[br][br]   ◇    ◆[br][br] 復興事業では全国から大勢の工事関係者が久慈地域に集まり、生活を送った。その恩恵は飲食や宿泊など、幅広い業種に及ぶ。[br][br] 市内でスナックを経営する50代女性は「単身赴任ということもあってか、毎週のように来店してくれる人が何人もいて本当に有り難かった」と語る。コロナ禍でも経営を下支えしてくれた常連客が去ることに、不安もある。[br][br] 震災後にフル稼働が続いたホテルや旅館は、ハード事業の完了を冷静に受け止める。[br][br] 久慈グランドホテルの新田宏和取締役(53)は「滞在する関係者が減るのは地域全体にとって確かに痛い」としつつも、「いわゆる震災前に戻るだけ。夢物語と思っていた道路もいよいよ開通する。悲観することはない」と語る。[br][br] 道路の開通が新たな観光需要を生み出す好機になると指摘し、「人の動きは活発化し、立ち寄り場所も確実に増える。開通を大きな転換点とし、一丸となって地域資源を磨き上げ、久慈のファンを増やしたい」と受け入れ準備を進めている。[br][br]連載(1)「変わる流れ」 https://www.daily-tohoku.news/archives/57475[br]連載(2)「八戸の優位性」 https://www.daily-tohoku.news/archives/57562 急ピッチで整備が進む三陸沿岸道路。工事には多くの地元業者が携わっている=2月末、久慈市長内町