青森県の2021年度一般会計当初予算案は、新型コロナウイルス対策関連経費が総額を押し上げ、前年度比5・4%増の7186億円となった。近年では06年度当初の7221億円に次ぐ規模だ。[br] 新型コロナの影響が続く。予算では感染拡大防止や地域経済の回復に重点を置いた。一方で、基金を取り崩さない収支均衡を5年連続で維持した。臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税が増額されたことで、財政規律を堅持できた。[br] 一体編成した20年度補正予算案を合わせた実行予算ベースで、新型コロナ関連に盛ったのは812億円。三村申吾知事は今回の予算案を「明日へつなぐ攻守一体予算」と名付けた。[br] ワクチン接種の態勢整備や医療提供体制の確保といった「守り」、新しい生活様式に対応した取り組みを促すためのデジタル化推進など「攻め」の事業がずらりと並ぶ。[br] あらゆる分野にまたがった関連事業の中には、こじつけに見えるものもある。県には明確な効果を得る努力を求めたい。いかにして県民の命と暮らしを守り、県勢の発展につなげていくか。多くのお金をつぎ込んで結果が出なければ、「張りぼて予算」と言われかねない。事業の実効性が問われている。[br] 国内では医療従事者のワクチン接種が進んでいる。4月には高齢者への接種が行われるが、社会全体が流行から守られる集団免疫の獲得には時間がかかりそうだ。「少なくとも2年くらいの感染対策が必要」と指摘する専門家もいて、マスクの着用や3密の回避は当面続けなければならない。[br] 「地域経済の回復とコロナの先を見据えた事業展開の推進」を掲げる県だが、感染収束はワクチンの効果に左右される側面が大きく、「コロナ後」の時期を明確に見極めるのは困難と言わざるを得ない。[br] 先行きが見通せない状況だけに、継続的な対応も必要になるだろう。特に外出自粛によってダメージを被った観光分野の需要回復には一定の時間を要するとみられる。追加の手当を検討するなど、切れ目のない支援の実施を求めたい。[br] コロナ禍にあって、密となる場面が少ない地方の暮らしが見直されている。青森県を含む地方で喫緊の課題となっている人口減少対策につなげる好機と捉えることもできる。[br] 新年度の事業で県民の生活を下支えし、「住みよい青森県」をつくり上げることが、求められている成果と言える。