八戸市の2021年度一般会計当初予算案が発表された。新型コロナウイルスの影響で市税収入が落ち込む中、編成された総額は912億円。コロナ禍で経済が疲弊する八戸圏域で市が果たす役割は大きく、コロナ後も見据え、地域経済をけん引していかなければならない。[br] 新型コロナは北奥羽地方の経済にも大きなダメージを与えた。外出自粛などの影響で市内の飲食店は売り上げが激減し、一部の中小企業も業績不振に見舞われた。市の予算を見ても、歳入の柱となる市税が前年度当初比5・1%減、金額にして15億円も減少するなど、いかに地域経済が大きな影響を受けたかが分かる。[br] こうした中、市に求められるのは、圏域全体の経済の立て直しだ。市と近隣7町村で組織する八戸圏域連携中枢都市圏の推進事業費は、前年度からほぼ横ばいの10億8千万円。事業内容を見渡すと、新たな仕掛けが少なく、経済の連携事業も乏しい印象は否めない。[br] 市は新年度、市内に本社機能を移転した企業を助成する事業や、短期滞在型の業務体験の場を提供する、おためしサテライトオフィス誘致事業など新規事業を実施する。コロナ禍を意識した取り組みで方向性は間違っていないが、将来的には圏域内に拠点が広がるなど広域で恩恵があるような展開を求めたい。[br] 八戸と苫小牧を結ぶ、はちとまネットワーク連携事業は、事業内容、予算額ともに物足りなさを感じる。今年は三陸沿岸道路が全線開通する年で、市が札幌と仙台を結ぶ新たな物流ルートとして以前から主張していた、八戸―苫小牧航路の活用をアピールする好機だ。[br] それにもかかわらず、広報誌への情報掲載や観光案内の情報発信など、これまでと同じような事業が目立つ。地道なPR活動も大切だが、物流関係者を招いてのフォーラムや企業説明会を開くなど、思い切った仕掛けも必要ではないか。[br] 青森県内でもワクチン接種が始まり、コロナ収束への道のりがようやく見え始めてきた。接種が順調に進めば、今年後半には国内の経済が一気に回り出すという見立てもある。[br] アフターコロナも見据えた具体的な戦略を持たなければ、他の圏域に差をつけられかねない。コロナ禍の今、問われているのは個々の自治体の発想力ではないか。産業振興、雇用創出、子育て支援、移住促進―。これまで市が培ってきたノウハウを総動員し、広域的な視点で施策に取り組んでほしい。