【連載・えんぶりのない冬】(下)中心街のにぎわい

八戸市中心街を舞台にした「一斉摺り」には大勢の観覧客が来場し、中心商店街に経済波及効果が生まれる=2020年2月
八戸市中心街を舞台にした「一斉摺り」には大勢の観覧客が来場し、中心商店街に経済波及効果が生まれる=2020年2月
江戸時代に八戸藩の城下町となった現在の八戸市中心街は、地域の祭りやイベントの主会場だ。だが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、八戸三社大祭の合同運行や八戸七夕まつりなどの年中行事が相次いで中止になった。今年の「八戸えんぶり」までも開.....
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 江戸時代に八戸藩の城下町となった現在の八戸市中心街は、地域の祭りやイベントの主会場だ。だが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、八戸三社大祭の合同運行や八戸七夕まつりなどの年中行事が相次いで中止になった。今年の「八戸えんぶり」までも開催が見送られ、街なかのにぎわいは薄れつつある。[br][br] 八戸えんぶりは毎年2月17~20日の期間中、観覧入り込み客数が30万人前後に上る。特に、各えんぶり組が中心街で競演する「一斉摺(ず)り」が行われる初日は、悪天候に見舞われた昨年も15万6千人を記録。地元や近隣地域の観覧客に加え、首都圏などから観光客が訪れており、中心商店街への経済波及効果は大きい。[br][br] 八戸えんぶりは「みちのく五大雪まつり」の一つに数えられ、誘客が伸び悩む冬季観光の柱でもある。昨年は八戸圏域版DMO(観光地域づくり推進法人)「VISIT(ビジット)はちのへ」が、英国とフランスのメディア関係者を招いたプロモーション活動を展開し、インバウンド(訪日外国人客)戦略のてこ入れに乗り出した。その“成果”が注目された矢先にコロナショックは拡大した。[br][br]   ■    ■[br][br] 八戸えんぶりと中心街の関わりは深い。昭和40年代に始まった一斉摺りは、後継者難で衰退傾向にあった組の活動を活性化させるのが目的だったが、会場の中心街には大勢の人が詰め掛け、物販や飲食消費などの経済的な恩恵も生まれた。[br][br] ただ、今年は“特需”が消え、中心商店街には落胆の色が広がる。大型小売店の担当者は「えんぶりが終わるまでは冬物商品の時期。街にえんぶりを見に来て、帰りに衣料品や食品を購入する人も多かった。中止の影響は大きい」と話す。[br][br] 例年は昼夕の飲食需要も高く、苦境続きの飲食業界はさらなる打撃を受けた。あるビルオーナーは「苦しくても『何とかえんぶりまでは』と頑張ってきたが、中止を聞いて休業に入った飲食店もある」と明かす。観光客による宿泊や土産品購入の消費も失われた。[br][br] 「昨年の八戸えんぶり後からコロナ禍がずっと続くと思わなかった。この1年間は穴が空いた感じだ」。八戸中心商店街連絡協議会の松井正文会長は、中心街関係者の声を代弁するように無念の思いを語る。[br][br]   ■    ■[br][br] 感染が収束しない中、今後も大規模な催しは例年通りの開催が難しい。ただ、中心街が歩行者天国になる「はちのへホコテン」や八戸花火大会といった屋外イベントは、コロナ禍でも十分な感染症対策を講じて成功裏に終えた実績もある。[br][br] 中心街の歴史は、地元を代表する年中行事と共に歩みを進めてきた。街なかが活気を取り戻し、消費喚起に結び付けるには、新型コロナに対応したイベント開催の在り方を模索することが重要なポイントになる。[br][br] 八戸地方えんぶり保存振興会長で、VISITはちのへの塚原隆市理事長は「特に屋外イベントは開催を前提に検討し、できる方法はないか知恵を絞ることが大事だ。若い人たちにもアイデアを出してもらい、コロナ下でのまちづくりを考えたい」と強調する。八戸市中心街を舞台にした「一斉摺り」には大勢の観覧客が来場し、中心商店街に経済波及効果が生まれる=2020年2月