【刻む記憶 鉄路をつなげ】(6・完)東北DC

「東北DCを何としても成功させたい」と語る、びゅうトラベルサービスの森崎鉄郎社長=1月25日、東京都(同社提供)
「東北DCを何としても成功させたい」と語る、びゅうトラベルサービスの森崎鉄郎社長=1月25日、東京都(同社提供)
東日本大震災から9年がたった2020年3月14日、東電福島第1原発事故の影響で不通となっていた常磐線富岡―浪江間が復旧し、JR東日本管内の被災路線はついに全て運転を再開した。だが、そんなうれしいニュースはすぐにかすんだ。新型コロナウイルスが.....
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 東日本大震災から9年がたった2020年3月14日、東電福島第1原発事故の影響で不通となっていた常磐線富岡―浪江間が復旧し、JR東日本管内の被災路線はついに全て運転を再開した。だが、そんなうれしいニュースはすぐにかすんだ。新型コロナウイルスが社会を一変させた。[br][br] コロナ禍は経営に深刻な打撃を与えた。JRグループの営業収益は20年3月期の連結決算で2兆9466億円だったのに対し、21年3月期の決算見込みでは約4割減の1兆7730億円と大幅に下方修正。営業利益はマイナス5350億円と1987年の国鉄分社化以降、初の赤字となる見通しで、震災時の落ち込みをはるかに超える。[br][br] JR盛岡支社観光開発課長や八戸地区駅長を経て、ジェイアール東日本企画盛岡支店長を務める熊谷徹哉さん(61)は「会社の存続にすら関わるほどの状況。早く収束することを願うしかない」と危機感を隠さない。[br][br]  ◇  ◇  ◇[br][br] 震災から10年の節目の今年は、4月から半年間にわたって「東北デスティネーションキャンペーン(DC)」を予定する。元盛岡支社営業部長で、びゅうトラベルサービス社長の森崎鉄郎さん(54)は「世の中の関心は新型コロナに向かいがちで、震災の記憶や関心が薄まってしまわないか心配だ」と懸念する。[br][br] 10年前には東北新幹線の全線開通に伴う青森DCに関わった。震災直後に予定されていた青森DCも開催の可否で揺れたが、復興支援の新たな目的で団結し、東北6県を巻き込む一大キャンペーンとして成功させた。ただ、今回は状況が全く違う。新型コロナとの長い闘いを覚悟する。[br][br]  ◇  ◇  ◇[br][br] 東北DCに暗雲が立ち込める一方で、森崎さんは今の被災地の空気に肌で触れてもらうことに大きな意味があると思っている。背中を押すのは学生時代に味わった感動だ。[br][br] 横浜市で生まれ育ち、高校の修学旅行で訪ねたのが北東北だった。東北新幹線大宮―盛岡間が開業して1年がたった1983年の秋、白と緑の200系新幹線に乗って盛岡に降り立ち、十和田湖などを回った。奥入瀬渓流や岩木山の美しい景色は今も鮮明に残る。[br][br] 「“リアルな旅”の魅力は、何物にも代えがたい」と森崎さん。オンラインでの旅行商品販売など非接触での対応を検討しつつ、実際の旅行を楽しんでもらえる方法を模索する。[br][br] 間近で見てきた復興の歩みが苦難に立ち向かわせる。「この10年で東北の人々が作り直してきたもの、作り上げてきたものを伝える。それがわれわれの使命だ」「東北DCを何としても成功させたい」と語る、びゅうトラベルサービスの森崎鉄郎社長=1月25日、東京都(同社提供)