時評(2月5日)

新型コロナウイルス感染が再拡大、日本経済への影響が広がっている。2020年の消費者物価指数が4年ぶりに前年を下回り、物価が持続的に下落するデフレ圧力が強まっているのだ。日銀の黒田東彦総裁がデフレ脱却を目指して打ち出した異次元の金融緩和から約.....
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 新型コロナウイルス感染が再拡大、日本経済への影響が広がっている。2020年の消費者物価指数が4年ぶりに前年を下回り、物価が持続的に下落するデフレ圧力が強まっているのだ。日銀の黒田東彦総裁がデフレ脱却を目指して打ち出した異次元の金融緩和から約8年過ぎたが、2%の物価上昇目標は達成できず、再びマイナスに落ち込んでしまった。[br][br] 有効なワクチンの普及に期待したいが、コロナがいつ収束するのか、先行きは不透明だ。政府・日銀はデフレ回避に向けて、日本経済の実態を精緻に分析して適切に対応する必要がある。[br][br] 総務省が発表した20年平均の生鮮食品を除く全国消費者物価指数は、前年比0・2%下落した。政府の観光支援事業「Go To トラベル」による宿泊料の値下がりや急激な原油安が物価押し下げ要因となった。同年12月は前年同月より1・0%の下落で、5カ月連続のマイナスとなり、10年3カ月ぶりの大きな下げ幅だ。[br][br] 物価が下がることは、家計負担の軽減になり大歓迎だが、それが長期化すると企業収益を悪化させ、賃金下落や景気低迷につながる恐れがある。12年に発足した第2次安倍内閣がデフレ脱却を最優先課題に掲げたのは日本経済を回復基調に戻すためだった。[br][br] 日本でコロナ感染症の患者が確認されて約1年になる。20年の物価はコロナに振り回された。4月は3年4カ月ぶりのマイナスになり、政府の緊急事態宣言解除でいったんは横ばいを維持したが、8月以降はGoToによる宿泊料割引で、マイナス圏に逆戻りした。コロナによる世界的な需要減で原油価格が大幅に下がり、ガソリンや電気代などが下落したことも響いた。[br][br] 黒田総裁はデフレに再び陥るリスクについて「非常に高いとはみていない」との認識を示した。GoToなど一時的な要因が大きいと判断しているわけだ。だが、物価下押し要因はほかにもある。はっきりしているのは携帯電話料金の値下げであり、大手各社は3月以降に実施することを表明した。[br][br] 賃上げがどの程度実現するのかも大きな問題だ。春闘がスタートしたが、コロナへの不安は労使ともに強く、賃上げの流れは失速気味である。雇用環境も懸念材料だ。20年の有効求人倍率と完全失業率は前年より悪化している。[br][br] 賃金は下落傾向にあり、さらなる消費低迷がデフレを招きかねない状況であることをしっかりと認識すべきだ。