産直「手作りの味」岐路 加工品に法規制の波

漬物など手作りの加工品が並ぶ産直の売り場。出品者に制度改正の波が押し寄せる=25日、八戸市の八菜館
漬物など手作りの加工品が並ぶ産直の売り場。出品者に制度改正の波が押し寄せる=25日、八戸市の八菜館
産地直売所などで親しまれる漬物や塩辛などの“手作りの味”が、岐路に立たされている。加工食品の安全確保を目的に法規制の波が押し寄せ、自宅の台所とは別に専用の調理室を整備したり、衛生管理基準を高めたりするよう求められている。青森県南地域の事業者.....
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 産地直売所などで親しまれる漬物や塩辛などの“手作りの味”が、岐路に立たされている。加工食品の安全確保を目的に法規制の波が押し寄せ、自宅の台所とは別に専用の調理室を整備したり、衛生管理基準を高めたりするよう求められている。青森県南地域の事業者は、多くが高齢者で対応に苦慮しており、中には費用負担や手間を敬遠して出品自体をやめる人も。直売所などの関係者は制度に一定の理解を示しつつ、「商品が減れば地域の食文化に影響しかねない」と危機感を強めている。[br][br] 主な改正では2015年4月、食品表示法が施行され、熱量や塩分量などの栄養成分表示が義務付けられた。原材料やアレルギー表示についても新たなルールが設けられ、20年4月、5年間の経過措置を経て新制度へ移行した。[br][br] 18年6月には、東京五輪の開催やライフスタイルの変化を踏まえ、15年ぶりに食品衛生法が改正された。特に営業許可制度の見直しで、これまで許可不要だった漬物製造業と、魚卵などを原料とする水産製品製造業が許可業種とされた影響は大きい。施行日の今年6月1日前に自治体に届け出て営業していた事業者は3年間の猶予期間があるが、その後は基準を満たす専用の調理室が必要で、申請や更新には手数料も発生する。[br][br] 国際基準「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理も20年6月に施行された。小規模事業者は簡易版も認められるが、経過措置が終わる今年6月1日からは、業界の手引書に沿って洗浄や殺菌などの衛生管理計画を作成し、記録を残すことが義務付けられる。[br][br] 八戸市卸センターの「JAアグリマーケット八菜館」に約10年間、赤カブ漬けやダイコンのビール漬けなどを出品している同市の成田由美子さん(70)は「商売するからにはきちんとした商品を届けなければならないが、漬物作りは重労働。年齢を考えると調理場を作ってまで続けられるかどうか…」と思い悩む。 同店では、既に食品表示ルール変更の段階で「対応が難しい」と出荷をやめた生産者もいるといい、小清水燈美店長は「生産者がついて行けるかどうか」と不安を口にする。[br][br] 南部町のある産直の担当者は、「高齢化で会員が減っているのに、ますます出荷が減る。産直で昔ながらの食べ物を知る人もいるのに、その機会も減ってしまう」と訴えた。[br][br] 関係者からは「制度が複雑で分かりにくく、周知も不十分」などと、行政に丁寧な説明を求める声も上がる。県保健衛生課は「連絡ルートがなく、全ての関係者に伝え切れていない面はある」とし、疑問があれば県や各地域の保健所に相談するよう呼び掛けている。漬物など手作りの加工品が並ぶ産直の売り場。出品者に制度改正の波が押し寄せる=25日、八戸市の八菜館