電気事業連合会がむつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設で検討に着手する意向を示した、原発を持つ電力各社による共同利用案。これまでの経緯をたどると、青森県内にコールセンターを開設し、“地ならし”を進めてきた関西電力など事業者の思惑が透けて見える。一方、報告を受けた三村申吾知事は「全くの新しい話」と驚くが、関電の参画は以前からくすぶっていた話でもある。反核燃団体は「県が初めて聞くとするなら能力を欠いている」と非難し、県と事業者の関係性をいぶかしむ。[br][br] 「背景を見れば、なぜこういう動きが出てくるのか、県は承知していると思う。それなのに、なんで紋切り型(の回答)をするのか。机の下で(県と事業者の間に)通ずるものがあると感じる」[br][br] 昨年12月23日、反核燃団体の代表を務める元県議の古村一雄氏は、県庁で県のエネルギー担当職員にこう指摘した。共用案を拒否するよう求めたが、県側が「(電事連の報告は)県に何らの判断を求めるものではない」と姿勢を明確にしなかったからだ。[br][br] そもそも電事連が県庁を訪ねた同18日、三村知事は共用案の報道が先行したことに、「県民に混乱、不安を生じさせたとすれば、誠に遺憾」と怒りをあらわにしたが、案そのものには「聞き置くだけ」と賛否を明らかにしなかった。[br][br] ■ □[br] むつ中間貯蔵は、東京電力ホールディングスと日本原子力発電の使用済み燃料を保管する施設。共用案は、福井県に原発再稼働の前提として県外搬出先の提示を求められた関電を救済する狙いがあるとみられる。[br][br] 18年以降、関電はコールセンターを青森市内に複数開設。核燃料サイクル施設が立地する青森県への地域貢献と関電はうたうが、使用済み燃料搬入への“布石”と見る向きは根強い。[br][br] さらに関電は昨年7月、「県外の中間貯蔵について、共同・連携を含むあらゆる可能性を検討していく」との方針を明示。電力10社の中で「共同・連携」という言葉を使ったのは関電のみだった。[br][br] 六ケ所村の再処理工場などと異なり、むつ中間貯蔵の立地協定には東電と日本原電が調印し、電事連は名を連ねていない。古村氏は「なぜ今、電事連がしゃしゃり出てきたのか」と関電救済策との見方を強める。[br][br] □ ■[br] 三村知事は本当に事業者の狙いに気付いてないのだろうか―。[br] 18年6月の県議会定例会一般質問で、当時の経産相への要請内容を問われ、「サイクルについては関係自治体だけの問題とすることなく、国民の理解促進に努めていただくよう求めた」と答弁している。[br][br] 関係自治体だけの問題に矮小(わいしょう)化すべきではないという考えは、福井県が県外搬出を求めた理由でもある。全国の燃料がむつに搬入可能となる共用案は、立地経緯と相反するものだ。[br][br] 昨年末の会見では共用案について、「エネルギーという大きなテーマの中、まさに政府が前面に立ってさまざまになすべきことがある状況に至っているんだと思う」と、国や事業者の立場に理解を示す場面があった。[br][br] 一連の三村知事の姿勢には、原子力政策を推進してきた自民党県議でさえ物足りなさを口にする。「原子力にはリスクもある。受け入れる部分はあっても、厳しく対応しなければいけない時がある」と、是々非々の対応を求めている。