「負けない。」安心して楽しめる場所を 常連客がミニ講演会/八戸料理いちいの木(東京)

ついたてが並ぶカウンター越しに常連の話を聞く三田光子さん(右)=3日、東京・新橋
ついたてが並ぶカウンター越しに常連の話を聞く三田光子さん(右)=3日、東京・新橋
長引く新型コロナウイルスの影響で繁華街の客足が落ち込む中、東京・新橋で開店8年目を迎えた「八戸料理いちいの木」が感染防止対策を徹底した上で、常連に磨いた教養などを披露してもらうミニ講演会の催しを始めた。「こういう時でも安心して楽しめる場所を.....
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 長引く新型コロナウイルスの影響で繁華街の客足が落ち込む中、東京・新橋で開店8年目を迎えた「八戸料理いちいの木」が感染防止対策を徹底した上で、常連に磨いた教養などを披露してもらうミニ講演会の催しを始めた。「こういう時でも安心して楽しめる場所をつくりたい」。経営する八戸市出身の三田光子さんは、逆境に負けじと自らを奮い立たせる。[br][br] 3日夕、JR新橋駅に程近いビル2階の店内に数人の客が顔をそろえた。「馬道と呼ばれる地域があり、浅草寺の北側に馬場も残っている。ここは馬の輸送拠点だったんじゃないか」。歴史好きという都内の男性弁護士は江戸時代の地図を示すと、知られざる浅草かいわいの歩みを意気揚々と紹介した。[br][br] 店名にちなんで「一木(いちき)会」と題した集まりは毎月第1木曜日を基本に、月ごとに講師と聞き役の客を入れ替えて開かれる。顔と名前は知っている。世間話も弾むけど、この人の素顔って一体―。そんな常連同士が互いの話に耳を傾け、終わった後に一献傾けながら懇親を深めるのが狙いだ。[br][br] 夜ごと酔客の喧噪(けんそう)に包まれる新橋にあって、カウンター席だけの落ち着いた雰囲気の店には法曹、大学教授、企業経営者といった多士済々が集う。八戸から取り寄せたサバやイカを目当てに同市出身者も足しげく通い、都内に住む斉藤あき子さん(55)は「新型コロナで帰省できない中、懐かしい味を東京で楽しめるのは本当にありがたい」と話す。[br][br] ただ、感染が拡大の一途をたどる中で客足はピーク時の半分以下に落ち込む。都からの度重なる営業時間短縮要請も追い打ちを掛け、近隣では明かりが消えた飲食店も。「うちみたいな店は真っ先に淘汰(とうた)される」。そんな危機感を抱く三田さんを支えたのが常連だった。[br][br] 「せっかく顔なじみになったし、一度じっくり話を聞きたいね」。11月上旬、以前から客同士で温めていたという講演形式の懇親が具体化し始めると、その翌日には三田さんの下に企画書まで届けられるスピード感で開催にこぎ着けた。「ここは皆さんの横のつながりでもっているようなもの」。3日の初回を無事に終えた三田さんが目を細めた。[br][br] 店内では消毒を徹底し、カウンターには席を仕切る透明のついたてが厳重に並ぶ。コロナ禍での営業はまだ当分続きそうだが、「負けてなんかいられない」と力を込める三田さん。「来年以降のワクチン投与が進めばみんなの気持ちが楽になるのかな。そこまで何とか頑張って持ちこたえたい」と力を込めた。[br]※随時掲載ついたてが並ぶカウンター越しに常連の話を聞く三田光子さん(右)=3日、東京・新橋