時評(12月11日)

安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会に関し、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で、安倍氏の公設第1秘書を略式起訴する方向だ。参加者の会費で賄えなかった費用計900万円余りを補塡(ほてん)しながら、政治資金.....
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 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会に関し、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で、安倍氏の公設第1秘書を略式起訴する方向だ。参加者の会費で賄えなかった費用計900万円余りを補塡(ほてん)しながら、政治資金収支報告書には、2015~19年の夕食会に関する記載がなかったとされる。[br][br] 特捜部は、国会で「後援会の収入、支出は一切ない」と繰り返し答弁してきた安倍氏本人からも事情聴取したい意向だが、安倍氏周辺によると、安倍氏は事務所側から補塡はないと説明を受けていたという。[br][br] しかし、安倍氏の「虚偽答弁」の疑いが晴れるわけではなく、もし事実を知らなかったとしても管理責任は免れない。今月の共同通信社世論調査では、安倍氏の国会招致が「必要」との回答は60・5%。十分に説明を尽くした上で、政治責任の取り方を明確にすべきだろう。[br][br] 一方、自民党の吉川貴盛衆院議員は安倍内閣で農相を務めていた18~19年に、鶏卵業界に便宜を図ってもらおうと働き掛けていた鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループ元代表から、大臣室などで計500万円の現金を受け取った疑いが持たれ、東京地検特捜部が捜査中だ。[br][br] 内閣官房参与を辞任した西川公也元農相も、アキタ社から豪華クルーズ船で接待されたほか、現金数百万円を受け取った疑いがあり、複数の農水族議員が絡む“不祥事”の様相を呈している。[br][br] 捜査の契機は、昨年の参院選広島選挙区を巡る河井克行元法相夫妻の買収事件の関係先として、検察当局が今年7月にアキタ社を家宅捜索したことだ。元法相は妻の案里参院議員への集票を依頼し、地元議員ら100人に現金を配布したとして公判中だが、農水族議員の疑惑を含め、安倍長期政権による緩みが表面化したと言えそうだ。[br][br] 政治とカネを巡っては、当事者が捜査中を理由に説明を拒否するケースが相次ぐ。官房長官時代に安倍氏の話を追認した菅義偉首相も最近「答弁を控える」と繰り返し、真相解明にも消極的だ。しかし捜査と説明は別の問題であり、こうした姿勢が政治不信を増幅させている。[br][br] 弁明の場としては1985年に設置された政治倫理審査会がある。本人の申し出か委員の過半数の賛成で開催できるが、強制力がなく、06年まで8人の審査が行われただけだ。実効性を高めるため、審査会規程を見直すなどして活用を図るよう求めたい。