【連載・青い森鉄道全線開業10年】(中)イメージ戦略

青い森鉄道のイメージキャラクターとして海外からの観光客を出迎える「モーリー」=2019年12月、青森市
青い森鉄道のイメージキャラクターとして海外からの観光客を出迎える「モーリー」=2019年12月、青森市
2002年の開業当初、青い森鉄道は営業区間の短さ(目時―八戸間25・9キロ)や華々しくデビューした東北新幹線の影に隠れ、知名度に課題があった。特急廃止による使い勝手の悪さ、運賃値上げなどマイナスイメージもつきまとった。同社は、生まれ変わった.....
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 2002年の開業当初、青い森鉄道は営業区間の短さ(目時―八戸間25・9キロ)や華々しくデビューした東北新幹線の影に隠れ、知名度に課題があった。特急廃止による使い勝手の悪さ、運賃値上げなどマイナスイメージもつきまとった。同社は、生まれ変わった路線として、JR時代との違いを分かりやすくアピールする必要があった。 目指したのは、地域に愛される鉄道だ。「私(わ)」「輪」「和」の三つの思いを込めた「『わ』の鉄道」というキャッチフレーズを掲げ、「集い、和めるマイレール」の実現に取り組んだ。[br][br] その象徴が全線開業前年の09年に誕生し、今も現役のキャラクター「モーリー」。青色の木をモチーフとし、駅員の帽子をかぶった姿は一目で鉄道のキャラと分かるほどシンプルだ。モーリーは文房具などのグッズにも採用され、幅広い世代に親しまれる。[br][br] 同社の広報担当者は「国鉄とJR時代には、鉄道は“お堅い”イメージがあった。キャラクターの設定により、鉄道を親しみやすさや身近な存在との印象を持ってもらえた」と語る。[br][br]   ◇    ◇[br] 生活の足として活用される地方路線は、沿線住民と密接で良好な関係を結ぶことも重要だ。[br][br] おいらせ町の向山駅では、周辺住民らでつくる「向山駅愛好会」が、駅を中心とした地域活性化に取り組んでいる。[br][br] 1992年に無人駅となり、寂れる一方だった同駅を盛り上げるため、町内会の「向山駅利活用部」を独立させる形で13年12月に発足した。現在は中村淳悦会長(67)の下、周辺住民と全国の鉄道ファンら約70人が所属する。[br][br] 駅舎を使ったミュージアム(新型コロナウイルスで休館中)では、国鉄時代の備品や蒸気機関車の勇姿を撮影したパネル、鉄道模型などを展示する。毎年6月には全国の鉄道ファンが集うイベントを主催。地元野菜やオリジナル駅弁を販売する10月の「駅まつり」も人気を集める。[br][br] 中村会長は「青い森鉄道の沿線には、まだまだ魅力のあるコンテンツがある」と強調する。[br][br]   ◇    ◇[br] 国内では、東京や大阪、札幌など観光客に人気の都市部で新型コロナの感染に歯止めが掛からない状態が続く。その中で「三密」の懸念が比較的少ない地方での観光が脚光を浴びつつある。[br][br] その一方、近年の成長が著しかったインバウンド(訪日外国人客)は出入国制限が続き、今後も回復が見込めない。観光の先行きは不透明だが、何とか駅のにぎわいを取り戻したい―と、中村会長は打開策を模索している。[br][br] 「地域住民や鉄道ファンの力も駆使して、観光客を呼び込めるアイデアを提供したい。青い森鉄道は私たちみんなの鉄道。鉄道とともに生きる地域を一緒につくっていければ」[br][br] 「わ」の鉄道は、沿線住民たちの愛と情熱にも支えられている。青い森鉄道のイメージキャラクターとして海外からの観光客を出迎える「モーリー」=2019年12月、青森市