【連載・青い森鉄道全線開業10年】(上)予想外

2014年3月に新設された筒井駅。学生を中心に新たな乗客需要の掘り起こしに成功した=3日、青森市
2014年3月に新設された筒井駅。学生を中心に新たな乗客需要の掘り起こしに成功した=3日、青森市
「旅客運輸収入が計画の半分にも満たない。全線開業10年の中で、これまでにない経験だ」 2020年度第1四半期(4~6月)の事業状況が報告された9月の取締役会後に開かれた記者会見。青い森鉄道の千葉耕悦社長は、業績の大幅な落ち込みに悔しさをにじ.....
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「旅客運輸収入が計画の半分にも満たない。全線開業10年の中で、これまでにない経験だ」 2020年度第1四半期(4~6月)の事業状況が報告された9月の取締役会後に開かれた記者会見。青い森鉄道の千葉耕悦社長は、業績の大幅な落ち込みに悔しさをにじませた。[br][br] 原因は新型コロナウイルスの影響による利用者の激減だ。好調なインバウンド(訪日外国人旅行)など観光需要にも支えられ、順調にいけば全線開業10周年の節目の年を、3度目の実質黒字で飾ることができるはずだった。[br][br]   ◇    ◇[br] 同社の路線は、年間約450万人が利用する。通勤・通学での利用者が全体の6割を超える“生活路線”だ。全線開業以降も利便性向上による利用者増加を追求。青森県と連携し、最も効果が期待できる学校近くに二つの新駅を整備した。[br][br] その一つは、青森市にある県立青森高の最寄り駅となる筒井駅(14年3月開業)だ。乗客数は設置初年度の13年度が1日当たり平均1199人。定期利用者が順調に伸び、19年度は1604人にまで拡大した。[br][br] 同市の県立青森工業高近くに移転新築され、実質的な新駅となった野内駅(11年3月開業)は、11年度の694人が19年度には1065人に。移転前は数十人だったといい、大きな違いだ。[br][br] 観光客や買い物客、通院する高齢者向けの特別企画切符の販売を展開し、定期券購入者以外の取り込みにも力を入れた。[br][br] 現在取り扱っている企画切符は、県営浅虫水族館の入場券と1日乗車券のセットや、IGRいわて銀河鉄道と両方で使える回数券など計11種類。季節限定の切符などもあり、利用者の興味や関心を引くような商品を次々と打ち出している。[br][br] 「利用者は減り続け、赤字を垂れ流すのは確実」という当初の見方を覆す成果を、関係者も驚きを持って受け止める。県の美濃谷邦康青い森鉄道専門監は「乗客を増やし続けることができているのは予想外。ニーズを的確に捉え着実に成長している」と評価する。[br][br]   ◇    ◇[br] 県や沿線自治体の支援と地道な企業努力で利用者を増やし続けてきた同社に、冷や水を浴びせているのが新型コロナだ。[br][br] 直近となる20年度上半期の旅客運輸収入は前年同期比45・5%減の4億3053万円。緊急事態宣言や外出自粛で旅行客が減り、収入の柱である定期外収入の約6割が消えた。[br][br] 本年度の収支が赤字に陥るのは確実。県は既に、同社が支払う必要がある線路使用料の減免を視野に入れている。ただ、減免は一時しのぎに過ぎない。経営を安定させるには、より多くの人に活用してもらえる方策が不可欠だ。[br][br] 「コロナ収束は見通せないが、反転攻勢のための検討を進める。地域の足は必ず守っていく」。5日、青森駅で開かれた全線開業10周年の記念イベントで、千葉社長は決意を表明した。[br][br]  ……………………[br] 並行在来線の青い森鉄道は4日に全線開業10周年を迎えた。県民の生活と物流を支え続けてきたこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する。2014年3月に新設された筒井駅。学生を中心に新たな乗客需要の掘り起こしに成功した=3日、青森市