時評(12月2日)

厳しい経営環境に置かれている地方銀行に対し、政府が再編圧力を強めている。地銀の経営は、人口減少、超低金利の長期化という構造的な問題に新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、好転の兆しは見えない。地銀の体力が弱まれば、地域経済はさらに疲弊すると.....
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 厳しい経営環境に置かれている地方銀行に対し、政府が再編圧力を強めている。地銀の経営は、人口減少、超低金利の長期化という構造的な問題に新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、好転の兆しは見えない。地銀の体力が弱まれば、地域経済はさらに疲弊するとの危機感が背景にある。[br][br] 合併や統合は、経営の規模拡大と体力強化により、貸し出し余力を生む。ただ、それは手段の一つで、地元の要望に応える魅力あるサービスを提供する力をいかに高めるかが問われる。再編ありきではなく、金融機能をより充実する改革が重要だ。[br][br] 地銀の合併・経営統合に向けた議論は1990年代半ばから続いているが、地銀再編論者の菅義偉氏が首相に就任したことで、新たな局面に移った。[br][br] 政府は、地銀が合併・経営統合に加え、抜本的な事業の見直しを行うことを条件に、システム統合などの費用の一部を補助する制度を2021年夏にも創設する方針を決めた。日銀も歩調を合わせる形で、経営統合などを進める地銀に対し、金利を優遇する支援制度を設けた。22年度まで3年間の特例措置だ。[br][br] これに先立ち5月には、同一地域内の地銀が合併することで融資シェアが高まっても、独占禁止法適用除外とする合併特例法が成立、このほど施行された。合併のハードルが下がったのだ。[br][br] 今後の焦点は経営トップの判断に移る。地銀は元来、独立路線意識が強く、合併・経営統合には消極的なところが多い。相手の選択肢も地理的理由から限られる。取引先が重なる銀行同士が一緒になってもメリットは薄い。格上の相手と一緒になれば経営の主導権を握られるだけに、体力がまだ残っている時点では、自らの経営努力で乗り切りたいというのが多くの銀行の本音のようだ。[br][br] 複数の銀行が一緒になれば、店舗の統廃合、人員削減は避けられない。システムの統合も必要だ。新型コロナの感染拡大が続く中、融資先の破綻に備えた引当金の積み増しも必要になっている。一方でデジタル化対応も急がねばならず、多額の費用と時間をかけて再編に踏み切っても、どこまでメリットを生み出せるか疑問視する声もある。[br][br] 再編まで踏み込まなくても、地銀同士が店舗の合理化や新規事業などさまざまな分野で業務提携し、コスト削減に取り組むことも検討すべきだ。地域の経済状況は簡単には改善しない。中長期的な展望を踏まえた抜本的な経営改革が急がれる。