【連載・東北新幹線全線開通10年】(1)七戸十和田駅

新しい市街地が形成される七戸十和田駅前。住宅や金融機関など建物が増えつつある=30日、七戸町
新しい市街地が形成される七戸十和田駅前。住宅や金融機関など建物が増えつつある=30日、七戸町
「本当に駅を使ってもらえるのか」―。2010年12月、東北新幹線「七戸十和田駅」が開業する直前、駅が立地する七戸町の経済関係者から不安の声は絶えなかった。 あれから10年。12月4日に同駅は開業後の大きな節目を迎える。当時、1日475人だっ.....
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 「本当に駅を使ってもらえるのか」―。2010年12月、東北新幹線「七戸十和田駅」が開業する直前、駅が立地する七戸町の経済関係者から不安の声は絶えなかった。[br][br] あれから10年。12月4日に同駅は開業後の大きな節目を迎える。当時、1日475人だった乗客者数は、右肩上がりに伸び、15年以降は700人台を継続。開業当時の不安は払拭(ふっしょく)され、今では上北、むつ下北両地域の玄関口となった。[br][br] 駅に町の無料駐車場が整備されたことも後押しし、周辺市町村からの利用も増加。自宅から七戸十和田駅を経由して首都圏へ―という「パークアンドライド」の形が定着した。[br][br] 同駅の立地は町内の街づくりにも劇的な変化をもたらした。駅のある荒熊内地区は、かつての原野から姿を変え、現在は町の中心部となりつつある。多くの住宅が立ち並び、町内で新築が増えるエリアだ。[br][br] さらに、開業に合わせてオープンしたイオン七戸十和田駅前店や、道の駅「しちのへ」の産直施設「七彩館」の効果で、買い物の中心地へ様変わりした。[br][br] 今後も発展は続く。駅南側には23年に新しい町総合アリーナ(仮称)が誕生予定。26年開催の青森県国民スポーツ大会剣道競技の会場となるほか、さまざまなイベント利用を見込む。[br][br] 将来的な役場の移転でも最有力地とみられ、小又勉町長は「立地から段階を踏んで、駅周辺の環境整備に努めてきた。荒熊内地区を中心に街づくりが進んでいくのが理想だ」と語る。[br][br] 一方、観光面を中心に課題も浮かび上がってきた。開業時、駅の名称を巡り、「七戸駅」にするか「七戸十和田駅」にするかで議論となり、最終的に「七戸十和田駅」で決着した経緯がある。同駅は、“十和田湖・奥入瀬観光”の玄関口としての期待も背負っている。[br][br] 開業後は、駅の名称の効果もあり、奥入瀬渓流や十和田湖の観光客を中心に利用があり、「県南地方の観光振興にも寄与できたはず」というのが地元商工関係者の大方の見方だ。[br][br] しかし、観光客が地元に滞在し、金を落とすといった直接的な効果は乏しい―という指摘も少なくない。駅前には宿泊施設や飲食店がほとんどなく、観光客は十和田湖や奥入瀬渓流を巡った後、青森や三沢、八戸などのホテルや旅館に宿泊するケースが多い。駅近くにある産直やイオンなどは地元客の利用がメインだ。[br][br] また、開業当初は地元有志が集まって観光をアピールするさまざまな団体ができるなど、魅力発信の取り組みが盛んだったが、近年は活動が縮小している印象は否めない。[br][br] 有志団体をつくるなど積極的に活動してきた田中清一さん(47)は「今は町全体の活動が落ち着いている。またアリーナなどが完成すれば、新しい動きも出てくるのでは」と強調する。[br][br] 宿泊施設については、現時点で民間大手が進出する動きはないが、町側は引き続き誘致を模索していく考えだ。[br][br]◇   ◇    ◇[br] 東北新幹線が八戸駅から延伸し、七戸十和田、新青森の両駅が開業してから間もなく10年となる。全線開通は地元にどのような変化をもたらしたのか。課題や展望を探る。新しい市街地が形成される七戸十和田駅前。住宅や金融機関など建物が増えつつある=30日、七戸町