ブレーキが十分でないジェットコースターに乗せられたような不安を抱く人は多いのではないか。新型コロナウイルスの1日の新規感染者は過去最多を更新、流行は「第3波」に入ったとみるべきだ。集団感染が続発して重症者も増え、一部で病床が逼迫(ひっぱく)してきた。[br] 春の第1波から夏の2波、今回の3波と順に波は大きくなり警戒レベルが高まる。晩秋で暖房のため乾燥した密閉空間が増す。新規感染者はさらに増えて長引く可能性が大きい。[br] 新興感染症だが、このウイルスと10カ月向き合ったことで経験も積まれた。3密(密閉、密集、密接)や会食で感染しやすい。日常の注意で感染をゼロにできないにしても、減らせることは分かってきた。危機感を持って対策を強めたい。[br] 社会経済活動との両立に決め手はない。緊急事態宣言の再発令を避け、無理なく持続できる日常で制御する道を探りたい。高齢者ほど死亡率が上がるなどの特性を理解して予防や治療に努めてほしい。感染者の増減に一喜一憂するのではなく、感染爆発を阻止する戦略を政府は示すべきだ。[br] 感染の場は繁華街から家庭や職場に移り、高齢者にも広がる。無症状や軽症が多いというあいまいさが対策を困難にしてきた。「氷山の一角」のデータの背後に隠れる「見えざる実態」も推察して対処する必要がある。[br] PCR検査は増えたが、全国でまだ1日約3万件。積極的に検査している欧米より少ない。検査を拡充すれば見つかる感染者はもっと増える。陽性率は世界保健機関(WHO)が危険水準とする5%を超えており、検査が必要な人々に届いていない。高齢者施設で検査の徹底は急務といえる。[br] 重症者や死亡者の抑制は重要な目標である。感染が拡大する中、医療現場の努力で致死率は下がってきた。医療崩壊を回避して第3波を乗り越えられるよう医療体制の整備と支援を急ぐべきだ。[br] 季節性インフルエンザは今のところ例年に比べ100分の1以下と少ない。一般に大流行が起きている時に、別の感染症は抑えられる傾向がある。安易な予断は許されないが、今年のインフルエンザ流行は低いのではないか。その分、コロナ対策に力を集中できる。[br] ワクチンや薬の開発で新型コロナに使える手段は来春増えるだろう。過剰な期待は禁物だが、光明も見えてきた。医療の進歩を待ちつつ予防の基本を守り、深刻な危機をしのぎたい。