時評(11月22日)

南部町の馬淵川でサケの採卵や捕獲を行う事業が11月にようやく始まった。近年は、事業を担う馬渕川さけ・ます増殖漁協の内部対立を引き金に、休止状態に陥るなど異常事態が続く。本年度も例年より約2カ月遅れの開始で、関係者には正常化への一層の努力が求.....
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 南部町の馬淵川でサケの採卵や捕獲を行う事業が11月にようやく始まった。近年は、事業を担う馬渕川さけ・ます増殖漁協の内部対立を引き金に、休止状態に陥るなど異常事態が続く。本年度も例年より約2カ月遅れの開始で、関係者には正常化への一層の努力が求められる。[br] 今回の問題が表面化したのは2018年度だった。同漁協の総会で当時の組合長が緊急の動議によって解任され、新体制に切り替わった。混乱の余波は外部へも飛び火し、事業に協力してきた関係者の不信感を招いた。中でも近隣の内水面漁協へ及ぼした影響は大きかった。[br] 事業開始に当たっては、青森県の許可を毎年得ている。許可申請の際には、近隣の内水面漁協の同意書を提出してきたが、信頼関係が崩れたことで、交渉がまとまらなくなった。[br] 18年度は県への許可申請ができず、事業を休止。内部対立は収まるどころか、法廷闘争に発展するなど泥沼化の様相を呈した。19年度は、県の仲介もあり、どうにか再開にこぎ着けたものの、既にサケの遡上(そじょう)のピークを越えた年末からのスタートだった。[br] こうした中で迎えた本年度。組合長を代えるなど組織の立て直しに取り組んだが、近隣の団体との関係は2年たっても改善しないままで、県が再び間に入るなどした。開始は結局、11月にずれ込んだ。[br] サケの採捕事業の停滞は一つの漁協の問題にとどまらない。採捕ができるのは1河川で1団体が原則。県内全ての河川で均一に採卵ができる訳ではなく、場所によって多寡がある。そのため、県では県全体で放流数の目標を立てるなど、漁協間で融通し合う仕組みを作る。[br] 馬淵川は県内有数の稚魚の供給地で重要性が高い。加えて、サケの資源確保の取り組みには、国や海面漁業の関係者も関わる。馬渕川さけ・ます増殖漁協には、多くの人たちから託された責任をしっかりと受け止めてほしい。[br] 事業停滞が続けば、監督する県の指導が強まり、最悪の場合、解散を迫られる。今回の対立が、仮に組織をよくしたいという純粋な思いからだったとしても、事業そのものが立ちゆかなくなっては本末転倒だ。[br] 課せられた使命について今一度、向き合うことが再生への一歩となるはずだ。こうした問題を繰り返さないためには、組織運営の透明性を高めることも不可欠だろう。内外の関係者から信頼される組織に生まれ変わってほしい。