時評(11月18日)

16日に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動を除く実質で前期比5・0%増、年率換算は21・4%増と4四半期ぶりにプラス成長に転じた。 新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言が5月に解除されて経済活動がある程度戻ったこと.....
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 16日に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動を除く実質で前期比5・0%増、年率換算は21・4%増と4四半期ぶりにプラス成長に転じた。[br][br] 新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言が5月に解除されて経済活動がある程度戻ったことが数字を引き上げた。しかし、年率28・8%減だった4~6月期の大幅落ち込みから半分余りしか戻っていない。足元では感染「第3波」が広がり、10月以降に下ぶれするリスクがある。[br][br] 心配されるのが新型コロナ関連の倒産の増加だ。これまで政府、自治体、金融機関による緊急避難的な資金繰り支援の効果もあって倒産件数は低水準で推移してきた。しかし、東京商工リサーチによると、10月のコロナ関連倒産件数は104件と2月に関連倒産が始まってから初めて100件を超えるなど、影響が広がっている。[br][br] コロナ禍であっても経済を回したい政府の意向を受けて積極的な貸し出しをしてきた金融機関は、ここにきて融資先企業に十分な返済能力があるかどうか確認する動きが出ている。メガ銀行をはじめ金融機関は、倒産などに備えて貸倒引当金を積み増す傾向が強まっている。[br][br] これまでは、政府の支援などもあって金融機関は融資の際のリスクを負わなくて済んだが、今後は返済されなければ銀行の損失につながる自前資金による融資となるため、貸し出しには一層慎重になるとみられる。[br][br] 日銀が10月に発表した「金融システムレポート」は、「迅速な資金繰り支援に加え、貸出先企業の経営の持続可能性をしっかり見極め、そのうえで、企業の実情に応じた有効な支援を行っていくことが一層重要になる。この役割を担うためには金融機関自身の健全性確保が前提となる」と指摘している。[br][br] 体力が弱い零細企業の多い飲食業などは、年末から年明けにかけて経営の行き詰まりも予想され、金融機関が先行きの見通しが立てられない企業に対して、不採算事業からの撤退を求めるケースもあり得る。その場合はどのタイミングで「見切り」をつけるかが重要な判断になる。特に中小企業への融資の割合が多い、信用金庫などの中小金融機関はこうした金融リスクに対して貸倒引当金を積み増すなど、十分な対策を今のうちから取っておくべきだ。[br][br] コロナ禍がさらに長期化すれば、中小企業へのダメージは一層深刻になる。これが金融機関の健全性を損ねることは避けなければならない。