全国で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、これまで感染者が少なかった青森県内でも10月中旬以降、弘前市や八戸市でクラスター(感染者集団)が相次いで発生した。クラスターは次のクラスターの連鎖を生み、大規模な感染につながる恐れがある。発生の端緒を捉えた早期の対策が重要となるが、実際の感染拡大防止対策は容易ではなかったようだ。[br] 弘前市鍛冶町にある接待を伴う飲食店のクラブ「縷(ル)・シャモン」、スナック「シャモン」を起点としたクラスターでは、11月15日現在で関連する感染者が180人を超え、東北最大規模に発展した。県内で初めて新型コロナを原因とした死者も確認された。[br] 今回、感染拡大の一因として、管轄の弘前保健所による初動対応の遅れが指摘されている。飲食店側は10月初旬、従業員が体調不良を訴えたため、同保健所に複数回相談。同保健所は県外や海外の渡航歴がないことなどを理由に検査は行わず、地域の医療機関の受診を促した。飲食店も営業を継続していた。[br] 結果的に利用客だった男性医師の感染を知った飲食店側が同保健所に再度連絡。その後、検査が行われ、次々と従業員や利用客の感染が判明した。同居人や知人、職場関係者らの2次感染にとどまらず、3次以降の感染に広がった。[br] さらに感染した男性医師が勤務する弘愛会病院(同市)では、別の医師や職員に拡大し、クラスターが発生。入院患者への院内感染にも波及した。[br] 同保健所が当初から新型コロナの可能性を疑い、速やかに検査を実施していれば、事態は悪化せず感染を封じ込めることができたはずだ。対応が遅れると感染が拡大し、収束まで時間を要する感染症の怖さを証明する形となった。[br] 一連のクラスターで最初の感染者が10月12日に判明してから1カ月余りがたった。詳しい感染経路が不明なままの人もいるが、新規の感染者は減少傾向。濃厚接触者の検査がほぼ終了しており、県感染症対策コーディネーターの大西基喜医師は「感染は収束に向かっている」との認識を示す。[br] 県は問題を指摘される同保健所の初動対応について、感染拡大が落ち着いた時期に検証する方針。今冬は新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念され、これまで以上の警戒が必要となる。何が問題だったかをしっかりと振り返り、見直すべき部分は改善して今後に生かしてもらいたい。