天鐘(11月15日)

神武天皇は日向(宮崎県)から東を目指し、大和(奈良県)を攻めて一帯を平定する。紀元前660年に即位。『古事記』『日本書紀』が伝える初代天皇である。そして甘くておいしい飴(あめ)の“生みの親”とも▼かの神武東征に関して日本書紀に「水無しにて飴.....
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 神武天皇は日向(宮崎県)から東を目指し、大和(奈良県)を攻めて一帯を平定する。紀元前660年に即位。『古事記』『日本書紀』が伝える初代天皇である。そして甘くておいしい飴(あめ)の“生みの親”とも▼かの神武東征に関して日本書紀に「水無しにて飴(たがね)を造らむ」との記述がある。神話なのか史実なのか、最古の勅撰(ちょくせん)歴史書を巡る論争は今も尽きない。ただ、編さんされた奈良時代に飴は既に存在していたようだ▼稲作文化が根付く日本らしく原料は米。「阿米(あめ)」と記す古文書もある。でんぷんが酵素で分解されると甘い液体ができる。古来の甘味は、いわゆる水飴だった。砂糖を加えたお菓子として広まるのは江戸時代▼元禄の頃、細くて長い飴が庶民の人気を集める。色はめでたい紅白で長寿の願いが込められた。うたい文句は「千年飴」「寿命飴」。子どもの健やかな成長を祝う七五三で、縁起物として定着する千歳飴である▼晴れ着姿の手に大きな化粧袋。不慣れな柏手(かしわで)、おぼつかない足元も可愛(かわい)らしい。だが今年は少し様相が異なる。家族が総出でお参りしても、神前での祈願は人数制限。せっかくの笑顔がマスクの下に隠れている▼甘いものは不安な心を癒やし、気持ちを静めるというが…。ことごとく人生の節目に影を落とすコロナである。第3波は勢いを増して急拡大。間もなく2度目の冬を迎えるが、緊張は解けそうにない。