政府が追加経済対策のとりまとめに着手した。感染拡大への懸念がある新型コロナウイルス対応と、経済再生の両にらみの対策が柱となる。[br] その裏付けとして、菅義偉首相は2020年度の第3次補正予算の編成を関係閣僚に指示。年末にかけてまとめる21年度予算編成と一体化させた「15カ月予算」とし、財政面から切れ目のない対策を講じる方針だ。[br] 足元の景気について、政府は10月の月例経済報告で「持ち直しの動きがみられる」との基調判断を示している。16日に発表予定の今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、戦後最悪の急落を記録した4~6月期(年率28・1%のマイナス成長)から大幅に反発し、民間予測では23~15%のプラス成長が見込まれている。[br] しかし民需、外需ともに力強さを欠いており、欧米を中心にコロナ感染が再拡大している。国内外ともに経済活動を巡る環境は不透明感を増しており、追加経済対策の必要性は理解できよう。[br] 問題は政策の内容だ。来年の総選挙をにらみ、ばらまき型の政策を連ねてはならない。[br] 日本社会はコロナとの共存を図る「新しい生活様式」を模索しながら動きだしている。追加の経済対策はコロナ後を見据えて社会や経済構造を改革・転換させる方向へとつなげていく内容にすべきだ。[br] 検討課題となるのはワクチン接種や医療機関支援などコロナ感染拡大防止策のほか、デジタル改革や温室効果ガス削減に向けた技術支援、地方への人の流れを促す政策、防災・減災の「国土強靱化(きょうじんか)」などではないか。これらの分野で具体的政策と成長戦略を練ることが必要だ。[br] もちろん当面する雇用対策として「雇用調整助成金」の特例措置の延長や柔軟な労働移動を促す政策、消費を喚起する支援策など国民に安心感を与えていく施策を講じることも重要だ。[br] 政府は20年度の補正予算を2度にわたって編成し、財政支出は合計で57兆6千億円に上る。補正予算の財源は赤字国債で賄われ、当初予算も合わせた20年度の新規国債発行額は既に90兆円を超える。財政赤字はGDPの2倍超の水準になる。[br] これまでの補正予算で措置された予備費や事業には予算未消化分が多い。「Go To」事業など次々と問題点が指摘されている事業もある。追加経済対策を策定するに際しては、こうした予算配分の検証も必要だ。[br] 財政健全化を常に念頭に置いて政策運営をすべきだ。