時評(11月10日)

激戦となった米大統領選はバイデン前副大統領が現職のトランプ大統領を退け、第46代大統領に当選することが確実となった。 敗北したトランプ氏は選挙の不正を主張し、裁判で徹底抗戦する構えを示しているが、主張には根拠が乏しい。敗者として潔く政権交代.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 激戦となった米大統領選はバイデン前副大統領が現職のトランプ大統領を退け、第46代大統領に当選することが確実となった。[br][br] 敗北したトランプ氏は選挙の不正を主張し、裁判で徹底抗戦する構えを示しているが、主張には根拠が乏しい。敗者として潔く政権交代に協力すべきだ。[br][br] バイデン氏は「分断ではなく融和を目指す」と勝利宣言した。その公約通り、二分した国民を結束させることに全力を傾注してほしい。[br][br] 今回の選挙はトランプ氏の4年間に対する信任投票という意味合いが強かった。[br][br] 敵と味方を分け、対立をあおって支持を固めるトランプ氏の手法は熱狂的な岩盤支持層を生む一方、反トランプ勢力の拡大につながった。同氏の激烈なやり方に「トランプ疲れ」が沈殿し、バイデン氏は「トランプでなければ誰でもいい」という国民の受け皿になった。[br][br] とりわけ新型コロナウイルスを軽視、感染者が急増して死者が23万人を上回ったにもかかわらず、「峠は越えた」と楽観論を繰り返した。対策を取らなければ「暗い冬が来る」と警告したバイデン氏とは対照的だった。[br][br] トランプ氏はコロナ対応の失敗から国民の目をそらすため、黒人差別撤廃運動を巡る治安問題を争点化、平和的なデモの参加者を「暴徒」と非難する一方、白人至上主義者を擁護した。[br][br] 郵便投票など期日前投票が1億人を超え、投票率は劇的に高まった。バイデン氏の得票は7400万票を上回って史上最多。トランプ氏も7千万票以上を獲得した。この得票状況は分断がいかに深刻かをそのまま反映している。[br][br] バイデン氏が最優先課題としてウイルス対策を挙げ、特別チームを組織したのは心強い。公共の場でのマスク着用の義務化などを推進する見通しで、本腰を入れてウイルスの拡散防止に踏み出した、と評価したい。この他に、経済の立て直しや人種差別解消、環境問題など、トランプ政権下で顕著になった社会のひずみの是正に取り組む方針。[br][br] とりわけ注目したいのは外交方針の転換だ。トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、同盟国を軽視、国際的枠組みなどから離脱を繰り返した。バイデン氏は環境問題のパリ協定に再加入するなどとしており、「国際協調主義」へ復帰し、世界の指導者としての役割を再び取り戻す考えだ。[br][br] バイデン氏には内外の難問が山積し、前途は険しい。力まず着実な歩みを期待したい。