時評(11月5日)

コロナ禍による行動制限で、鉄道・航空各社の業績が暗転した。2021年3月期の決算見通しは、JR東日本、東海が民営化後初めての赤字転落、JR西日本、九州も大幅な赤字を見込む。日本航空とANAホールディングスは過去最大の赤字決算となる見通しだ。.....
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 コロナ禍による行動制限で、鉄道・航空各社の業績が暗転した。2021年3月期の決算見通しは、JR東日本、東海が民営化後初めての赤字転落、JR西日本、九州も大幅な赤字を見込む。日本航空とANAホールディングスは過去最大の赤字決算となる見通しだ。[br][br] 業績は4、5月が底で、東海道新幹線の利用者が前年の1割まで激減するなど、売り上げは各社とも落ち込んだ。その後は緊急事態宣言の解除や「Go To トラベル」キャンペーンなどの後押しもあり、客足は徐々に戻りつつあるが、回復までの道のりは遠い。[br][br] コロナ感染も冬期が近づき拡大期に入る。欧米では再び感染者が急増、行動制限は世界的に長期化しそうだ。各社は給与カットや採用減、出向などによる人件費圧縮、減便などで対応するが、環境激変の長期化を視野に抜本的な経営再構築が求められるのではないか。[br][br] JR東日本は9月中間決算の売上高が、前年同期の5割近い7872億円と過去最低となった。「Go To」で新幹線や特急の乗客数は7~9月に回復に向かったが、それでも前年同期の3割にとどまる。JR東海は、主力の新幹線の不振で売上高は6割減、来年3月期も5割減と大幅減収が続く。[br][br] 来年度(2022年3月期)は、乗客数の回復や人件費圧縮の効果で、両社は黒字化を予想するが、楽観は禁物だ。コロナの終息は見通せない。「Go To」もいずれ終了する。在宅勤務などの行動変容でコロナ以前の乗客数に戻らない場合も想定して、事業全体の見直しを検討すべきだ。[br][br] 鉄道より深刻な経営環境にあるのは航空だ。国内線とともに旺盛な需要があった国際線は、厳しい渡航制限で日航は4~9月の乗客数が前年同期比97%減の惨状で、来年3月期は、2700億円と12年の再上場以来初の赤字見通しとなった。ANAの赤字は日航の約2倍の5100億円で、リーマン・ショック時の10倍近い赤字幅と一層深刻だ。大型機を大量投入した国際線の拡大戦略が裏目に出た。[br][br] 両社とも、給与削減や出向のほか機材削減、路線運休や便数減、傘下の格安航空会社(LCC)の強化・新設など事業を大幅に見直す方針だ。しかし主力路線だった欧米の感染拡大が深刻化し、視界不良は続く。政府は、当面「Go To」延長や渡航制限の緩和、空港使用料猶予などで支援するが、リストラや公的支援の一段の強化が現実味を帯びそうだ。