天鐘(10月31日)

大学生や高校生の就職の形はさまざまだが、勤め先をテレビで知る例はあまりない。働く会社がくじ引きで決まってしまうというのも、考えてみればすごいことだ▼昔、プロ野球のドラフト会議には「悲喜こもごも」の枕詞(まくらことば)が付いた。選手は球団を選.....
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 大学生や高校生の就職の形はさまざまだが、勤め先をテレビで知る例はあまりない。働く会社がくじ引きで決まってしまうというのも、考えてみればすごいことだ▼昔、プロ野球のドラフト会議には「悲喜こもごも」の枕詞(まくらことば)が付いた。選手は球団を選べず、職業選択の自由が議論されたこともある。制度を揺るがした江川事件や、清原選手の涙は有名だ。ドラフトには光と影がつきまとってきた▼近年は光がまばゆいお祭りである。チームの人気も平準化され、多くの新人は「どの球団でもOK」だ。小さなころからの夢。プロで野球ができるうれしさがスポーツ面からも伝わってくる▼もっとも、最近は彼らを引き当てた側の方がはしゃいでいる。満面の笑みで拳を握り、「一緒に優勝しよう」とラブコールを送る。新人のレベルが高まったのか、「プロの壁」が下がったか。未知数の新戦力に早くも大喜びである▼「グラウンドには銭が落ちている」。昭和の名将・鶴岡一人さんは、人が2倍練習したら自分は3倍しろと教えた。本当に光れるか否かは努力次第。ドラフトはゴールではなく、スタートだ▼新人たちの歓喜の裏で、毎年それと同じ数だけの選手が辞めている。厳しい世界であることは、八戸学院大の大道温貴投手ら、青森県ゆかりの4人も当然、承知の上だろう。一日も早く、グラウンドで光り輝く姿を見せてほしい。健闘を祈る。