臨時国会が週明け26日に召集される。菅義偉首相は就任後初の所信表明演説に臨み、その後に衆参両院での各党代表質問、予算委員会と続く。[br] 政府、与党は臨時国会の会期を12月5日までの41日間として、新型コロナウイルスのワクチン接種関連法案などの成立を図る方針だ。[br] 安倍晋三前首相の下で、自民党が圧倒的多数を占める近年の国会では、政府、与党が特定秘密保護法や、集団的自衛権の限定的行使を容認した安全保障関連法といった国論を二分する法律を強引に成立させてきた。「丁寧に説明する」との安倍氏の言葉とは裏腹に、野党との議論は生煮えのまま数の力で反対を抑え込む手法が常態化していた。[br] 国の将来を左右する重要施策について、与野党の濃密な論戦を通じて国民の理解を深めるとともに、行政府による暴走をチェックする国会の使命が果たされているとは言い難い。菅政権が発足し、野党側では新生立憲民主党が誕生したのを機に、立法府が本来の機能を取り戻して権威を回復してもらいたい。[br] 臨時国会で議論が必要な課題は山積している。菅首相はコロナ対策と経済を両立させる必要性を強調するとともに、デジタル化を柱とする規制改革や、携帯電話料金の値下げ、不妊治療の費用負担軽減などを目玉政策に掲げる。どう実現していくのか、具体策や政策の是非について、国会論戦を通じて丁寧に説明責任を果たす必要がある。[br] さらに首相をはじめ、政府側の説明が不可欠なのは、言うまでもなく、日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題だ。なぜ6人が拒否されたのか、いまだに具体的な説明はなく、任命拒否に関与した杉田和博官房副長官の国会招致という野党の要求も検討すべきだ。[br] チェック・アンド・バランスの観点から野党側にはこの問題にとどまらず、森友、加計学園問題や桜を見る会についても政府を厳しく追及することが求められる。同時に、批判だけにとどまっていては広く国民の信頼を得ることはできない。それは立憲民主党の支持率が低迷し続けていることが証明している。[br] 同党の枝野幸男代表は1年以内に実施される次期衆院選で政権交代を目指す決意を示している。であるならば、自民党政権とは異なる具体的な政策を提示していかなければならない。[br] 臨時国会では、コロナ禍によって陥った現在の苦境をどうやって乗り越え、どうすればこの国の将来を明るいものにできるのか、骨太の議論を期待したい。