時評(10月22日)

新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた観光や飲食業を支援する政府の「Go To キャンペーン」事業は混乱が続き、批判を浴びた。コロナ対策と社会経済活動の両立を目指して、菅義偉首相が官房長官時代から推進しているが、制度設計が甘く、今後もトラブ.....
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 新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた観光や飲食業を支援する政府の「Go To キャンペーン」事業は混乱が続き、批判を浴びた。コロナ対策と社会経済活動の両立を目指して、菅義偉首相が官房長官時代から推進しているが、制度設計が甘く、今後もトラブルが予想される。中小事業者への配慮が足りないとの指摘もあり、コロナ感染状況をにらみながら、柔軟に再構築すべきだ。[br] 旅行需要を喚起するGoToトラベルは、旅行代金の50%相当を補助。うち35%分は代金から割り引かれ、宿泊なら1人当たりの補助上限は1泊1万4千円で、何度でも利用できる。[br] だが、配分された予算が足りなくなると判断した一部の大手旅行サイトが独自に割引額の上限を引き下げたり、利用回数を限定したりした。10月から東京発着旅行が対象に追加され予約が急増したためだ。割引額が大幅に引き下げられた客らが不満の声を上げ、実態が明らかになった。[br] 補助に格差があるのは不公平で、政府は予算枠追加を決定、各社は上限などを元に戻した。旅行サイト側は国に報告していたが、素早い対応ができず混乱を招いた。[br] コロナ関連対策ということで約1兆3500億円もの巨額予算を計上しており、その1割も使わないうちに混乱が生じたのは制度設計の不備としか言いようがない。[br] 批判はまだある。トラベル事業は割引額が大きいので、高価格帯のホテルや旅館に人気が集中するとの指摘がある。7月の事業開始から9月末までの速報値では、1人当たりの宿泊代金は平均1万2千円程度というが、割引額は計1099億円で利用実態はよく分からない。[br] さらに、中小旅行会社を悩ませているのが割引分の立て替えだ。国からの補助は後払いで、まずは会社が負担するが、手持ち資金の少ない中小の経営を圧迫しているという。[br] もう一つの柱であるイート事業でも制度の穴を突かれ、飲食店は迷惑を被った。この事業はインターネットの予約サイトで予約をすれば、昼食500円分、夕食千円分のポイントが付与される。予約して少額メニューの注文だけして差額を稼ぐ利用客が現れ、その手法がネットに拡散した。政府は付与分より少額の飲食を対象から外したが、何ともお粗末な話だ。[br] 経済重視が進む中で、これからインフルエンザ流行時期と重なる。支援事業も含め、政府は的確に柔軟に対応してほしい。