時評(10月13日)

原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定を巡り、北海道の寿都町と神恵内村が国の調査に参加すると表明した。 最終処分は極めて強い放射線を扱い、数万年から10万年という想像を絶する長い期間を要する厄介で重い課題である。これか.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定を巡り、北海道の寿都町と神恵内村が国の調査に参加すると表明した。[br] 最終処分は極めて強い放射線を扱い、数万年から10万年という想像を絶する長い期間を要する厄介で重い課題である。これからも原発を稼働し続けるのか、その賛否を問わず避けては通れない。今回の2町村の表明を最終処分場選定の一プロセスの動きと捉えず、原発を取り巻く多くの問題を幅広く、徹底的に議論する契機にすべきだ。[br] 国は2000年に核のゴミの最終処分に関する法律を制定。地下300メートルより深い地盤に埋める「地層処分」を決めた。処分地選定については「文献調査」「概要調査」「精密調査」を20年かけて進めると定めた。[br] その後、国の事業はほとんど動かなかったが、2017年に最終処分できる可能性がある地域を示した「科学的特性マップ」を公表した。文献調査に進む意向の2町村では反対意見も多く聞かれる。07年には応募しながら住民の反対で撤回した高知県東洋町の実例がある。[br] 経済産業省と原子力発電環境整備機構は2町村の判断を歓迎するが、最大20億円との交付金を支払えば済む問題ではない。今後も丁寧な地元対応が求められる。高齢化が進む小さな地域社会を分断させてはならない。[br] 約2年の文献調査では過去の記録で火山や断層を調べるが、科学的に未解明なことが多い。「特性マップ」の信頼性を疑問視する指摘もある。3段階ある調査の内容を最新の知見で検証し、調査に反映してほしい。[br] 核のごみの最終処分は使用済み核燃料の再処理が前提の大事業だ。国内には1万8千トン以上の使用済み核燃料が全国の原発や六ケ所村の再処理工場に保管されている。[br] 原子力規制委員会は9月に使用済み燃料を再処理するまで保管する中間貯蔵施設(むつ市)に事実上の合格を出した。ここを永久保管地にしてはいけない。[br] 東京電力福島第1原発事故の後、原発再稼働は進まず、使用済み核燃料の発生量は減少。原発内に乾式保管施設を新設する構想が出ている。そもそも再処理せず埋める「直接処分」を検討すべきだという意見も根強くある。一体どうするのか。[br] 政権が代わった。国は、核のゴミ問題を次代に先送りしないことを確認し、幅広い議論を主導すべきだ。今こそ原子力政策を巡る矛盾や難題に正面から向き合うことが求められている。