歯止めのかからない少子化を背景に、岩手県内でも県立高校の統合が進みそうだ。県教委は2020年度内の県立高校再編計画後期計画(21~25年度)の策定に向け、9月までに各地域での検討会議や県民との意見交換を終えた。[br] 前期計画(16~20年度)では、全日制課程を63校255学級から62校224学級に編成。学級減が中心で、計画期間内に実際に統合されたのは宮古工業と宮古商業のみだった。[br] 岩手は面積が広く、中山間地域も多く抱える。入学者数だけで単純に統合を判断すれば、地域によっては通学が困難になり、教育機会が著しく損なわれる恐れもあることなどから、統合については相当慎重に協議を進めてきたとみられる。[br] しかし、生徒数の減少は待ったなしで続く。県内の中学校卒業予定者は20年3月が1万680人なのに対し、25年3月には9850人となり、1万人を割り込む見通し。前期計画で既に多くの高校の学級減を実施していることもあり、後期計画では統合がいよいよ避けて通れない状況になっている。[br] 県北地方も例外ではない。2月に公表された後期計画の素案では、総合学科を有する一戸(一戸町)と工業系の福岡工(二戸市)を24年度に統合し、県北に専門教育の拠点校を整備する方針が示された。[br] 地元では当然、単独校として存続を求める声が上がっている。加えて、福岡工では校舎の改築工事が行われていることから、県教委は統合した場合の校舎活用の在り方も含めて、地域住民へ丁寧に説明すべきだ。[br] 久慈東(久慈市)と久慈工(野田村)を巡っては、前期計画でいったんは統合の方針が示された。しかし、野田村が村内の宿泊施設を活用して下宿施設を整備するなどの支援策を打ち出し、実際に久慈工の入学者数が増加したため、県教委は統合の判断時期を延期した。[br] ただ、将来的な統合の方針は変わっておらず、県教委は21年度の入学者の状況を踏まえて判断する考え。増加傾向にあった久慈工の入学者数も、19年度は前年度比14人減の32人、20年度は12人減の20人と大きく落ち込んでおり、まさに正念場を迎えている。[br] 地域にとって地元の高校がなくなることへの不安は大きい。一方で少子化という現実も重くのしかかる。こうした中で再編を円滑に進めるには、統合を想定した場合により良い教育環境がどう確保できるのか、徹底的に議論する必要があろう。