時評(10月7日)

11月3日の米大統領選まで1カ月を切る中、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領は、対立候補のバイデン前副大統領に対する支持率の後れがさらに広がった。 ここにきて憂慮されるのは大統領が敗れた場合、急増が予想される郵便投票に不正があるとし.....
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 11月3日の米大統領選まで1カ月を切る中、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領は、対立候補のバイデン前副大統領に対する支持率の後れがさらに広がった。[br] ここにきて憂慮されるのは大統領が敗れた場合、急増が予想される郵便投票に不正があるとして選挙結果を受け入れず、政権交代に応じないことを示唆している点だ。こうした大統領の姿勢は米国の民主政治のルールを崩しかねない。結果を率直に受け入れるよう要求したい。[br] 大統領の戦略はコロナ禍の下、激戦州などを積極的に遊説して支持者に直接訴え、その熱狂と勢いを支持拡大につなげようとするものだ。同時にバイデン氏が治安対策に弱腰であることに争点を移し、初動対応を非難されているコロナ危機から国民の目をそらす狙いがあった。[br] 大統領の遊説先の集会は自身も含め、マスクを着用する支持者はほとんどおらず、クラスターの発生源になると懸念されていた。大統領は先月末のバイデン氏とのテレビ討論で「同氏は人的距離が相当あっても見たこともない巨大なマスクをしている」とあざ笑った。[br] だが、大統領は今回、ウイルスを軽視した果てに感染し、その危険性を自ら証明、思惑とは裏腹にコロナ問題に国民の目を集めてしまった。[br] 戦略は破綻し、根本から立て直さざるを得ない。マスクの着用一つにしても、陣営にとってはマスクをしないことが「強さ」の象徴だっただけに、深刻なジレンマになるだろう。[br] 両氏のテレビ討論は「醜悪な闘い」(米紙)と酷評されたように、政策論議そっちのけの罵倒合戦となった。しかし、そうした下劣な応酬にした責任の多くはバイデン氏の発言に割込みや妨害を続けた大統領にある。[br] 大統領は討論の中で白人至上主義者擁護など問題発言を繰り返した。最も看過できないのは選挙で負けた場合「平和的な政権交代」に応じることを確約しなかった点だ。選挙情勢が好転しない中、バイデン氏に有利となる郵便投票を「不正の温床」とおとしめる作戦を展開。討論でも「何カ月も結果が判明しないかもしれない」と脅し、敗北しても政権移譲しない可能性を示唆、開票を巡り大混乱に陥ることが懸念されている。[br] 大統領は選挙結果が最高裁にまで持ち込まれる際の布石として、空席に保守派の判事を据えることを急いでいるが、郵便投票に不正がない限り、審判を受け止める潔さを示さなければならない。